決勝に挑む健大高崎ナインも坊主頭が印象的
「自分は頭が小さいので……」
試合後、自身のミスによって同点に追いつかれたことを悔い、涙に暮れていた星稜の外野手・専徒(せんと)大和も、奈良県のマスコットキャラクターのように頭を丸めていた。星稜の応援団が陣取る1塁側アルプスに近いライトを守る専徒は、応援団に気合いをアピールするためにも試合前夜に背番号「19」の星英人と一緒にホテルに備え付けのカミソリで剃り上げたという。
「剃ったばっかりの昨日の夜はつるつるだったんですけど、一晩経って、少し生えてきました。気合いを入れ直して、準決勝を勝ちきるためでした。敗れたこの悔しさを忘れないようにしっかり練習して、夏にまた帰ってきたい」
ほとんどの選手が青光りする頭で戦ったなかで、今大会のラッキーボーイである背番号「13」の外野手・中島幹大だけは数ミリに伸びた坊主頭。その理由を訊ねると──。
「自分は頭が小さくて、短くし過ぎると帽子がすぐ脱げちゃって、ヘルメットもブカブカになるんです。プレーに支障が出るので、このぐらいに(笑)」
彼らとて、坊主頭だから野球の試合に勝てるとは思っていないだろう。だからといって、髪の毛を伸ばせば溌剌としたプレーができるとも考えていない。どこか時代に逆行していることを自覚しながら、大旗に臨むナインの気持ちを一(いつ)にするため、あえて頭を丸めて試合に臨むのだ。
■取材・文/柳川悠二(やながわ・ゆうじ) 1976年、宮崎県生まれ。ノンフィクションライター。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。2016年に『永遠のPL学園』で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。他の著書に『甲子園と令和の怪物』がある。