「ライドシェア」の出発式に出席した(右から)河野太郎デジタル相、東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長、斉藤鉄夫国土交通相(時事通信フォト)

「ライドシェア」の出発式に出席した(右から)河野太郎デジタル相、東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長、斉藤鉄夫国土交通相(時事通信フォト)

「4月から一部地域で解禁されるとはいえ、最初の参入を認められているのはタクシー会社のみ。タクシー会社を通じて集まった一般ドライバーがライドシェアに参入するわけですから、単純に商売敵が増えるだけ、と感じているドライバーが多いのも事実です」(真島さん)

 確かに、タクシー運転手にとってみれば「商売敵」が増えることに他ならず、反対意見しか出ないことは当然かもしれない。しかし、先述した地理の知識や安全運行に関する問題とは別の懸念もある。「ライドシェア」について取材を続けている民放キー局の経済部記者が疑問を呈す。

「すでに一部で言われていますが、ライドシェアの解禁が、違法な”白タク”をわかりにくくしてしまったり、逆に白タクに”お墨付
き”を与えるようなことにならないか、不安は残ります。折しも、日本にやってきた中国人観光客が、日本国内にいる同胞の違法な白
タク業者を利用し摘発される事案も増えている真っ只中です。タクシー運転手の数も、コロナ禍を経てかつての8割ほどしかいな
いと言われている中、方法は他にもあるのではないか、そんな声も一部から聞こえてきます」(民放経済部記者)

人員整理で去ったベテランドライバーはどこへ

 タクシー不足、タクシードライバー不足を補うためには致し方ない、というのが解禁推進派の意見だ。だが、それなら素直にタクシードライバーを増やそうとすればよいではないか、という指摘は方々で聞く。

「コロナ禍に多くのタクシー会社で首切りが断行され、より高い給与を支払わなければならないベテランたちが会社を去りました。ところが、最近になり客足が戻ってドライバーが足りないと言われているのに、ベテランが呼び戻されるパターンはあまり聞かない。結局、ベテランの代わりに安い賃金で働いてくれる若いドライバーを入社祝い金まで出して採用し、タクシー事業者が支払う人件費は減っている。人不足の原因は、他ならぬ賃金不足という側面もあるのに、その解決策として、さらに安く、質の劣る移動手段参入させようと言う国の姿勢には、違和感しか覚えません」(民放経済部記者)

 ここで思い出されるのは、東京都など大都市の一部ではよく見られるようになった電動キックボードの運用だ。警察などお上の了承を得た上で一部地域、一部事業者によって試験的に始められ、免許やヘルメット不要で利用できることから注目を集めた。もとより、危険性が指摘されていたこの制度だが、街を歩けば、制度の運用外になる違法な電動キックボードユーザーが目立つばかりでなく、しっかり当局の承認を経て運用されているレンタル事業者の車両による違法走行、人身事故も相次いでいる。複数のキックボード事業者が「違反者には厳しく対処する」とはいうものの、違反者は減らず、テレビニュース等で連日取り上げられるような現状だ。

 やはり、付け焼き刃、その場しのぎ感がどうしても拭えない「ライドシェア解禁」だが、果たして市民が安心して気軽に利用できる移動手段になるのかは、現時点ではまだ誰にもわからない、といったところか。

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