加藤鮎子こども政策担当相(右手前)。左下は岸田文雄首相(時事通信フォト)

加藤鮎子こども政策担当相(右手前)。左下は岸田文雄首相(時事通信フォト)

月500円を超えないなんて嘘っぱち

 高齢者も深刻だ。千葉県で夫婦共働きの60代、清掃会社で契約社員として働く女性が語る。

「夫は再雇用で200万円ほど、私も200万円ほどの年収です。年間7800円なんてたいしたことないって思う方もいるでしょうが、出さなくていいものなら出したくないです。子どもも育て終えましたし、これからずっと働くことを考えたら、払うばかりですからね」

 彼女は「いま子どもさんのいらっしゃる方々のため、というのは理解しているのですが」とも語る。子育て支援とそれに伴う分担は大切だ、しかし増税に次ぐ増税に社会保険料の負担増、そして物価高に高齢者となったばかりの身には不安しかない、とも。

 この国の給与所得者約5000万人のうち年収600万円以下は77%を占める(国税庁、2022年)。その多くが共働きであり、こうした中間層から中間下位層の負担が大きい。

 都内で福祉関係の仕事に従事する40代の独身男性も「騙された」と話す。

「実家住まいですがうちは私も含めて両親と3人で年間20000円近く徴収されることになります。これ、独身と子持ちを憎ませるための分断だと思いますよ。月500円を超えないなんて嘘っぱちだった」

 みな口々にこの「嘘つき」「騙された」と語る。思えば1989年に消費税が導入されたときも竹下登首相(当時)は「嘘つき」だった。国民(ユーザー)の自賠責保険料を財務省が返すと言って累計6000億円借り入れて延々返さない、返しても完済は100年以上先とかも「騙された」だろう。そうした事例をいくつも思い出すが、今回の「子ども・子育て支援金」もまた相当にたちが悪い、まして岸田首相は給料が上がるから負担は生じない、とまで言い切った。

 契約社員で働く神奈川県30代男性が語る。

「給料が上がるって、全員上がるわけじゃなし、徴収しても給料が上がるから平気だろって何を根拠に言ってるんだろうと思います。自民党、支持して旨味のある層しかいないでしょう」

 実のところ、もう左右といったイデオロギーの問題でなく上下の問題になりつつあるのが日本の現実か。まさに上下の問題、コロナ禍と旧統一教会問題を経て筆者もこうした傾向に触れてきたが、いわゆる自民党派閥の政治資金パーティー収入による裏金問題とキックバック、その収入に伴う税金逃れ、なし崩しになった自民党議員に対する処分など、自民党も高齢議員を中心に保守の偽看板を降ろした「逃げ切り」に舵を切ったように思う。今回も子育て世代の支援より、中間業者の利権ばかりが取り沙汰される。

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