医薬品として未承認のサプリメントなどを「がんや感染症に効果がある」と広告して販売したとして医師が逮捕された事例も(時事通信)
“手っ取り早く健康になりたい”というニーズ
健康効果を向上するどころか、体に害を与える懸念があるサプリメントだが、私たちにとって身近な存在になったのは比較的最近のことだ。
「海外、特にアメリカからの影響は大きく、“手っ取り早く健康になりたい”というニーズとマッチし、市場は急拡大しました。
しかし、“のむだけで健康になる”というのは幻想に過ぎません」(平地さん)
医薬品の多剤併用の裏に、製薬会社の「薬をより多く売りたい」という思惑があるように、サプリメントをはじめとした健康食品市場も健康増進よりも営利に重きを置かれる側面が多分にある。機能性表示食品についても、左巻さんは「健康政策ではなく、経済政策」と語る。
「薬やトクホと違って、莫大な時間やコストをかけずに健康効果をうたえるため、高齢社会で健康志向が高まる人に響くともくろんで、経済成長の大きな柱にしようと生まれたのが機能性表示食品です。
2015年にスタートすると、“人より健康になりたい、若いと思われたい”という人間の欲に刺さって健康食品市場は飛躍的に活性化しましたが、健康状態が悪化したという相談も加速度的に増えました」(左巻さん・以下同)
実際、消費者庁に寄せられる健康食品についての相談件数は2015年以降急増した。
「日本でもっとも売れているサプリメントはマルチビタミン剤です。これについて2011年に国立がん研究センターが発表した大規模調査が非常に興味深い。
ビタミンのサプリメントを摂取している人とそうでない人のがんのリスクを比較したもので、その結果は、男性では摂取者と非摂取者で違いはないが、女性の場合は摂取者の方が全がんのリスクが高いというもの。わざわざお金を出して不健康になっているのが現実なのです」
国立がん研究センターは衝撃的なこの調査報告を、このような一文で結んでいる。 《ビタミンサプリメントに頼らず、科学的根拠に基づいて、食事や生活習慣の改善を目指すほうが大切です》
百害あって一利なし──怪しいサプリメントかそうでないかを見極めることも大事だが、“手軽な健康”に惑わされない気持ちが、きっとあなたの命を守ってくれるはずだ。
(了。前編から読む)
※女性セブン2024年5月2日号
チラシに新型コロナウイルスの予防効果などを表示し販売したことが景品表示法違反となった健康食品もある(時事通信)
「健康食品」と「医薬品」知っておくべき定義
約4割が「サプリメント愛用」
成長を続けるサプリメント市場
サプリメント&健康食品による危険事例
健康食品の相談は年間数万件