国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん

20歳でヤクザに

──まこさんが「やりすぎた」というイタズラは気になりますね。

 焼きそばパンがありますよね。パンに詰めてある焼きそばを、半分掻き出して、その空いたところに犬の糞を詰めます。

 糞を包み紙で隠して、その同級生に「あんた、お腹減ってない。これ食べたい?」と言うと、答えはもちろん「イエス」です。「じゃあ、一気に行くよ。はい、口開けて」と言い、その口の中に細長い焼きそばパンを突っ込みます。その、焼きそばがサンドされている部分を超えて、犬の糞サンドの部分まで。

 すぐに同級生は、泣き出しました。いま考えたら、かなり陰湿なイジメをしていたと、反省しきりです。

──その後、男子とも喧嘩上等というスタイルで付き合い、紆余曲折を経てヤクザになりました。どのような経緯で当時の親分と盃を交わしたのでしょうか。

 鑑別所で一緒だったアヤという女の子とシャバで再会して親しくなりました。この子の旦那が宮野といい、住吉会傘下の杉野組々員でした。不良あるあるなのですが、アヤの妹が女同士の喧嘩に巻き込まれ、電話で応援を求められたので助けに行きました。

 この時、アヤはお腹が大きかったので、少し心配していました。なんと、喧嘩相手の女が妊娠しているアヤの腹を蹴ったのです。それを見た私は、頭に血が上ってしまい、女の頭を三段警棒で殴ってやったら、驚くほど出血し、辺りは修羅場と化しました。

 後にアヤと、旦那の宮野が傷害容疑で逮捕されて、私にも逮捕状が出ました。数日後、杉野良一親分から電話があり、「あんたのことを宮野がうたっている(自白している)。申し訳ない」と詫びられたので、すぐに杉野組事務所に出向きました。杉野親分は、私に会うなり詫びてくれました。私はこの時、「親分がわざわざ下りてきて詫びを口にしてくれるとは。この親分ってすごい人だな」と思いました。

──親分に惚れたわけですね。

 数週間後、岐阜南警察署に出頭しました。起訴されると、私の身柄は岐阜拘置所に送られ、独居房に入れられました。お次は刑務所かと観念していましたで、一週間後の夕方に「保釈」と言われた時は驚きました。

 なんと、杉野親分が保釈金を払ってくれたのでした。拘置所には、親分が弁護士を連れてきており「公選じゃなく、私選でやってくれ」と言われました。裁判では、懲役3年、執行猶予5年となり、赤落ち(服役)はせずにシャバに戻ることができました。

 そして杉野親分から「まこちゃん、女でもいいからヤクザをやれ」と言われました。実は、他組織からもお誘いがあったのですが断っていたのです。しかし、杉野親分にはついていけると思いましたし、親分としてのオーラがありました。そもそも無名の不良である私に「申し訳ない」と謝罪してくれた親分の男気に感銘を受けていたので、「やります」と応じていました。このとき私はちょうど20歳でした。

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