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【プラスチックと健康】海洋汚染だけでなく人体への悪影響の可能性 “脱プラスチック”に向けて何ができるのか

高速道路のパーキングエリアにあふれるプラスチックごみ(写真/アフロ)

高速道路のパーキングエリアにあふれるプラスチックごみ(写真/アフロ)

 ペットボトル、ストロー、ビニール袋、カップ麺の容器、そして自動車まで……。発明から150年以上経ったいま、プラスチックは豊かな生活のためになくてはならない存在として広く用いられている。その一方で、マイクロプラスチックによる環境汚染が問題視されるとともに、人間への悪影響も指摘されている。前編に引き続き、プラスチックによる健康被害についてレポートする。【前後編の後編。前編から読む

プラスチックは「食べる」や「飲む」ことよりさらに「吸う」リスクの方が大きい

 臓器や血管を汚染し、心臓発作や脳卒中といった血管疾患、乳がんや子宮内膜症、流産や死産などを引き起こすトリガーとなりかねないプラスチックだが、誕生した当初は“人類最高の発明品”と称され、世界の発展に大きく貢献してきた歴史がある。

 プラスチックとは、石油などから作った合成樹脂を材料として人工的に熱や圧力を加えて成形・加工された高分子物質の総称であり、最初に工業化されたのは1870年頃、アメリカでビリヤードのボールの材料として発明されたセルロイドだ。日本では1914年に石炭からフェノール樹脂が作られたのが始まりとされ、プラスチック市場が急速に広がったのは終戦後だった。環境汚染に詳しい早稲田大学創造理工学部教授の大河内博さんが指摘する。

「プラスチックは安価なうえに耐久性や気密性、絶縁性、透明性などの高機能を兼ね備えて成形もしやすい。1950年代には多様なプラスチックの生産が始まり、急激に普及しました」

 他方で陸から海に流れる海洋プラスチックごみは増加の一途をたどり、現在は世界で年間800万tもの流出がある。周辺国から黒潮が流れてくる日本の周辺海域は特にマイクロプラスチックの漂流量が多く、九州大学の研究チームが行った調査では、世界の海の平均値に比べて27倍に達していることが明らかになった。

 国連環境計画によると日本の1人あたりのプラスチック容器包装廃棄量はアメリカに次ぐ世界ワースト2位で、1人あたり年間32kg(2018年時点)。

 あらゆる製品に使用されているプラスチックの種類は現在100種以上だ。一見、プラスチックとは無縁に思える紙コップや不織布マスクにも内側のコーティングや原料の化学繊維などとして用いられている。科学ジャーナリストの植田武智さんはこう話す。

「使い捨ての紙コップにお湯を注いだり、お茶のティーバッグやだしパックを使用すると、マイクロプラスチックが放出されると報告されています。また、コロナ禍で普及した不織布マスクも、装着時にマイクロプラスチックとなる繊維を吸入する可能性があります」

 洗顔料や化粧品、歯磨き粉などに研磨剤(スクラブ)として含まれる「マイクロビーズ」や、合成洗剤や柔軟剤を包む「マイクロカプセル」もマイクロプラスチックの一種。米ボストン在住の内科医・大西睦子さんが説明する。

「たばこのフィルターにもマイクロプラスチックが含まれる。喫煙は本人の健康を害するだけでなく、吸い殻を捨てることでプラスチック汚染に加担し、周囲の人の健康を害することにつながります」

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