吉村洋文・大阪府知事(写真/共同通信社)
取材を続けるなか、7月1日、大阪市が「追加発表」を行なった。表向きは、事件を受けて市の全部署を調べた結果、〈同様の事案はない〉とするものだが、発表資料の下段に〈事案の概要等〉と題して、〈えたなどの部落差別を意図する賤称語を数十回以上にわたり執拗に繰り返しつつ誹謗中傷〉したとした上で、今回の差別発言の内容を次のように記載した。
〈子どもが結婚するときはシビアになる〉〈生まれ変わっても血は変わらない〉〈皮をなめして暮らしている〉〈部落地名総鑑で調べる〉
ただ、これは発言の引用ではなく、市がわざわざ文脈を削って表現を整えたものだ。ここにきて情報を追加した理由を市に聞くと、「より一層の市民への説明責任を果たすため」と答えた。
この追加発表についての報道は、〈子どもが結婚するときはシビアになる〉という文言のみを入れ、読売と毎日、NHKがローカルで報じたにとどまった。
差別発言の日常化は明らか
さらなる取材を通じ、私は、市の内部資料を入手した。ドライブレコーダーに残された職員2人の会話を大阪港湾局がテープ起こししたものだ。
その会話は、3月18日に1分間、同21日に計4分間、同28日に17分間、職員Aとその上司にあたる職員Bの間で交わされている。2人とも定年退職が近い年齢の人物だ。
全9枚にわたるその記録は、差別意識丸出しのグロテスクなものだった。
例えば市公表の「結婚するときはシビアになる」はこんな文脈だ。
〈A:差別大好きーやもんね(中略)だってそういう風に育ってきてんもん僕ら
B:なあ、会社はさることながら、ほんま、子供が結婚する時はちょっとなあ シビアになるわな〉(3月28日、引用部以下同)
また、市の追加発表であった〈皮をなめして暮らしている〉という発言は、次のような文脈だ。
〈A:皮舐めて暮らしとけ
B:人権研修受けなあかんで我々〉
差別表現は認識不足が原因であることも多いが、この2人の会話は、差別を問題として知りながら悪びれることなく肯定していることがわかる。
〈生まれ変わっても血は変わらない〉と発言したとされるくだりで、Aが口にしたのは〈どえったはどえったや なんぼ生まれ変わっても、どえったの血はどえったの血や〉という言葉。これだけでもおぞましい表現だが、その先も延々と、被差別部落出身者の尊厳を傷つける言葉が並ぶ。