佐藤愛子邸として外観が撮影されたハウススタジオ

佐藤愛子邸として外観が撮影されたハウススタジオ(c)2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (c)佐藤愛子/小学館

ベッドとデスクを横並びに置く“奇跡的な偶然”

 セットでは物語の動線を考えた間取りが優先されるが、その中で“奇跡的な偶然”があったという。

「ホンの中では佐藤先生の書斎のシーンと寝室のシーンは分かれていました。でもどちらもシーン数が少ないので予算的にもひとまとめにするのはどうかと提案していたんです。そうしたら先生のお宅でも同室になっていた。ベッドと横並びに仕事のデスクを置く発想は普通では浮かびません。さすが作家先生ですよね」

 書くことを生活の核とした佐藤さんは、起きてから寝る瞬間まで、小説やエッセイの内容を考え続け、推敲を重ねた。何かよいアイディアが思いついたときにすぐに机に向かえるように配置されているのだ。

 佐藤さんは原作でも、《仕事をしていた時は朝、眼が醒めるとすぐにその日にするべき仕事、会うべき人のことなどが頭に浮かび、『さあ、やるぞ! 進軍!』

 といった気分でパッと飛び起きたものでした》(『増補版 九十歳。何がめでたい』)と綴っている。

 約1か月かけて組まれたセットは2か月間の撮影を終えるとまもなく解体された。思いが詰まったセットが壊される名残惜しさはなかったのか──そう問うと安藤さんは「終わった達成感で気持ちがすっきりしますよ」と笑い、形はなくなっても作品として映像に残りますから、と語った。

 7月21日からは、佐藤さんが1973年に別荘を建てて以来、毎夏を過ごした北海道・浦河町の映画館「大黒座」でも『九十歳。何がめでたい』の上映が始まる。“めでたい”の輪はこれからも広がり続けていきそうだ。

取材・構成/渡部美也

※女性セブン2024年8月1日号

関連記事

トピックス

都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト)
《横綱昇進》祖父が語る“怪物”大の里の子ども時代「生まれたときから大きく、朝ご飯は2回」「負けず嫌いじゃなかった」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヤクザが路上で客引きをしていた男性を脅すのにトクリュウを呼んで逮捕された(時事通信フォト)
《ヤクザとトクリュウの上下関係が不明に》大阪ミナミでトクリュウを集めて客引き男性を脅して暴力団幹部が逮捕 この事件で”用心棒”はどっちだったのか 
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト))
《地元秘話》横綱昇進の“怪物”大の里は唯一無二の愛されキャラ「トイレにひとりで行けないくらい怖がり」「友達も多くてニコニコしてかわいい子だったわ」
NEWSポストセブン
ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
東京・昭島市周辺地域の下水処理を行っている多摩川上流水再生センター
《ウンコは資源》排泄大国ニッポンが抱える“黄金の資源”を活用できてない問題「江戸時代の取引金額は10億円前後」「北朝鮮では売買・窃盗の対象にも」
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン