芸能

《「あれは誰?」「軍用地主の息子よ」で大爆笑》沖縄『お笑い米軍基地』コント集団の挑戦、悲しい歴史もそこにある矛盾も「コントなんだ」

コント集団『お笑い米軍基地』に密着

コント集団『お笑い米軍基地』に密着

「基地を笑え!」──沖縄が抱える歴史は複雑だが、そんなコンセプトを掲げてコントとして表現するお笑い集団がいる。戦後79年を迎える今、彼らの挑戦と胸中に、ノンフィクションライターの中村計氏が迫った。

 * * *
 今日イチ──。お笑いの世界では、その日、いちばんウケた人や場面をそんな風に表現することがある。

 沖縄では、そのシーンはいつだって「今日イチ」だった。

 ヤンバルクイナの親子が、人間世界の観察にでかけるというコント中でのこと。冒頭で、ソファーに寝転がっている太り気味の若者が登場する。チップスを食べながら、携帯をいじっている男を眺めた親子は、こんなやりとりを展開する。

子「あれは誰?」
母「軍用地主の息子よ」

 このセリフが導火線となり、大爆笑が起きる。笑いが収まると、こんな説明が続く。

母「憧れの存在なの。国からガッポガッポお金が入ってくるのよ」

 ここで再び大爆笑。

「軍用地主」と言われても県外だとピンとこない人のほうが多いに違いない。この場面で爆発的な笑いが起きるところに、沖縄人の鬱積した思いが潜んでいる。

 沖縄に『基地を笑え!お笑い米軍基地』という舞台を上演する大人気のコント集団がいる。旗揚げは2005年だ。今年、20年目を迎えた。企画、脚本、演出、製作総指揮を一手に担うのは那覇市出身の芸人「まーちゃん」こと、小波津正光である。

 喜劇王と呼ばれたチャールズ・チャップリンを敬愛する小波津は、彼の〈人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ〉という名言をたびたび引き合いに出す。

「沖縄も同じなんですよ。沖縄には悲しい歴史もある。でも、東京で活動していたときに気づいたんです。ちょっと引いて眺めてみたら沖縄そのものがコントなんだな、と」

 小波津が最初に考えたコントは『人の鎖』だった。人の鎖とは、基地反対運動のうちの一つで、大勢で手を繋ぎ基地を取り囲むパフォーマンスのこと。コントの中では人数が足りず、鎖が繋がりそうで繋がらない。それを何とかしようとドタバタが起きるのだが、最後、ようやく繋がりかけたところで参加者の一人が帰ると言い出す。理由を聞くとこう答えるのだ。

「このあとね、嘉手納カーニバルに遊びにいく」

 ここでどっと笑いが起きる。嘉手納カーニバルとは何万人もの客を集める基地開放イベントのことだ。小波津が言う。

「沖縄の人は『基地はんたーい!』って言いながら、基地内で働くことに憧れたり、カーニバルを楽しみにしている。その矛盾を矛盾と思っていない。僕たちの舞台を観て初めて気づくんですよ。そうそう、そういうところあるよなって」

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン