2024年から運用が始まった「熱中症特別警戒アラート」。従来の熱中症警戒アラートを上回るこのアラートが発表された際に、住民に対して無料開放されることが求められる冷房が効いた施設、クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)の指定が全国ですすみ、庁舎など公共施設だけでなく、商業施設なども多く含まれている。朝の天気予報をテレビが知らせるときも、熱中症への警戒とともに、クーラーを積極的に使うこと、冷房が効いた場所で過ごすことをすすめる呼びかけが行われている。そのすすめに従って暑さから”避難”している人たちを中心としたトラブルが起きている。ライターの宮添優氏が、ショッピングモールなどにやってくる熱中症避難民との摩擦についてレポートする。
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夏休み真っ只中、神奈川県内の大型ショッピングモール内にあるフードコートは、誘い合ってやってきたらしい子供たちや家族連れで大変な賑わいを見せていた。スイーツや食べ物を店舗で購入しても、イートスペースはほぼ満席で座れないという状態で、立ったまま、購入した焼きそばやたこ焼きを食べる人も相次いだが、突如、そんな喧騒を引き裂くような怒声が響いた。
「なんだバカ女が、暑さで死んだら責任取れんのか?」
声の主は、70代くらいの高齢男性。高齢者男女数名で、イートスペースのテーブル席を陣取っていたが、テーブル上には食事は見当たらず、紙コップがいくつも置かれている。当時の様子を目撃していた、フードコート内にあるうどん店の男性店員(20代)が振り返る。
「怒鳴ったお客様たちは、10時のオープン直後に入店し、何も頼まず4時間以上席を陣取ってお喋りされていたんです。いや、イートスペースに置かれた無料の水やお茶を1人何杯も飲んでおられました。昼食どきになって混雑しても席を立つ気配はなく、食事を購入したものの席に座れず立ち尽くしていた若い女の子3人組が”席を変わってほしい”とお願いしたようなんです。それに対して、男性は激昂されました。正直、あまりに理不尽だと思いますよ。女の子たちは泣いていました。男性たちはその後も談笑を続け、午後になってやっと席を立たれました」(うどん店店員)
実は、この怒鳴った男性のグループだけでなく、一部の高齢者の行動が、ショッピングモール内では問題視されていた。モール運営担当の女性(50代)によれば、似たようなことは去年の夏頃から起きはじめたという。
「夏のあまりの暑さに、ショッピングモールを避暑目的で利用されるお客様が増えたんです。もちろん、そうしたお客様を拒否したいということではありませんし、体調のためにもぜひ涼んでほしいという気持ちはあります。ですが、お買い物をしたい、食事をしたいというお客様の迷惑になることは、ぜひ控えて頂きたい」(モール運営担当者)