このようなトラブルは、フードコート内のみで起きているわけではない。モール内のあちこちに設置されたベンチやソファも、ただ涼みたいだけの客に占拠され、中には有料のマッサージチェアに料金を入れることなく、昼寝をしている高齢客もいるという。さらに、じっと座る人たちだけではないことも、問題を広げている。
「モールは広くて涼しいですから、散歩目的の高齢のお客様もいらっしゃる。夏休みで、若い方で混雑するアパレルゾーンをそうしたお客様が歩くことで、ぶつかったなどのトラブルも起きています。こういう商売ですから、お客様を悪くいうつもりはありません。ですが、限度があります。やはり、もう少し考えていただきたいなと」(モール運営担当者)
筆者も最近、駅ビル内の飲食店が並ぶ通りの目の前のベンチを占拠する、高齢者グループを見かけるようになった。店のオープン前からすでにベンチに座っていて、昼時になると、店に並ぶ一般客の目の前で持参した弁当を食べ、数時間、多い時は朝から夕方までほぼ丸一日、おしゃべりに興じているようなのだ。
もちろん、駅ビル内とはいえベンチは公共的なものであり、誰が使っても構わないことは大前提だ。さらに、熱中症の恐れがある高温の場合、整備や指定が進むクーリングシェルターは必要不可欠で、役所や大型ショッピング施設の一部は、すでにクーリングシェルターとして運用されている。だが、店も利用せず、他の客に迷惑な形で長時間にわたってベンチを陣取る高齢者たちに、筆者を含め道ゆく人々も白けた視線を投げかける。中には、あからさまに舌打ちする男性客もいた。態度はさまざまだが、やはり誰もが、違和感や怒りを感じているようなのだ。
今のところは仕方のないこと
夏休み、という事情も影響しているのかもしれないが、熱中症避難を目的としている人たち、主に高齢者と子供たちによるトラブルは、図書館でもおきていた。千葉県内にある市立図書館の女性スタッフ(60代)が打ち明ける。
「朝のオープンと同時に、ご近所の高齢の方がバーっと押し寄せて、涼しい読書スペースが一気に埋まると、その後に勉強しにやってきた小中学生の席がなくなるんです。コロナ禍以降、そういったことが続き、今年は”学習スペース”を別途設けました。それでも構わず、高齢の方が席でイビキをかいている。出ていけとはいえず、皆が苦々しい思いをしているのです」(図書館スタッフ)
こうした傾向は、都会でも地方でも構わず現れはじめているようだ。佐賀県内の開業医の男性(50代)は苦笑しつつこぼす。
「高齢の患者さんの中には、体調が悪くないのに毎日やってくる方が何十人もいらっしゃる。誰々さんが病院にきてないけど、体が悪いのか? なんて会話が出るほどです。確かに、最近の夏は異常な暑さで高齢者には危険ですし、特にお一人暮らしの方は、高騰する電気代に不安を感じて、エアコンを我慢する方までいる。病院に来れば、仲間だっている、安心できるということでしょう。診察が終わってもなかなかお帰りにならない高齢者ばかりで混雑することもあります。今のところは仕方のないこと、と考えるほかありません」(開業医の男性)