RIZAPが展開する初心者向けコンビニジム「chocoZAP」(時事通信フォト)

「chocoZAP」の外観(時事通信フォト)

 同グループは2022年6月にRIZAPテクノロジーズという子会社を立ち上げて、エンジニアを内部で抱えることにした。これもまたコスト削減に大きく繋がったという。

「事業の急速な成長にともない、『chocoZAP』のシステムはめまぐるしいスピードで変化しています。外部のエンジニアとやり取りして発注するまでの間に仕様がまた変わってしまうこともありました。それはさすがに無駄が多すぎるということで、内部でエンジニアを抱える体制になりました」

「chocoZAP」の場合、DXが事業そのものと一体になっている。店舗運営にテクノロジーが欠かせない以上、エンジニアはエンジニア同士で固まって、ただ依頼された通りにプログラムを組むだけ……という環境では立ち行かない。そのため採用においては、スキルだけでなく、事業全体を俯瞰する観点の有無も見極めているという。

なぜDXが機能しているのか

 DXを推進するうえで多くの企業が直面するのが、既存業務との軋轢(あつれき)だ。そうしたなか鈴木氏は“経営企画・広報・マーケティング・DX・RIZAP事業統括”という立場で事業全体に携わっている。DX人材と既存セクションが融合するうえで、そのように「システム」と「事業」をつなぐ役割が重要だという。

「『chocoZAP』では、アプリなどを通して会員様の利用頻度やマシンの利用率といったデータを蓄積し、店舗運営へと生かします。しかし、どういう理由でどんな情報が求められているか具体的に理解できていないと、データをまとめるのにも難が出てきます。そのためDX人材と店舗運営を行う社員がひとつのチームとして気軽にやり取りできる社内環境であるように注意しています。

 私以外にも、事業とシステム両方に携わっている責任者が存在します。双方で人材が重なっていることが、既存セクションとDX人材の交流に繋がっているのだと思います」

 テクノロジーの力で人件費を削減しているぶん、会員に“やはり有人ジムのほうが使いやすい”と思わせないことが肝心だ。AIカメラでセキュリティを担保し、マシンの使い方を掲示物で案内、そして問い合わせにも対応できるよう仕組みづくりをしている。また、一部店舗ではトレーナーが定期巡回し、有人と無人のハイブリッド体制で運営が行われている。

 目指しているのは、“無人ジムでも安心”ではなく、“無人ジムだから安心”という環境だと語る。

「一概にスタッフがいれば万能というわけでもなく、人目を気にせず、ふらっと利用できることに価値を感じるお客様もいらっしゃいます。“無人ジムだけど、スタッフがいるより快適だ”という環境を突き詰めていきたいですね。

 たとえば車の自動運転だって、昔は危険なイメージがありましたが、現代は技術が進化して、『居眠りやよそ見がないぶん、人間が運転するより安心だ』と感じる人もいるのではないでしょうか。人間だと接客などのスキルにバラつきが出る一方、システムにはそれがなく、高い品質を安定して保てます。IOTなどによって、これから数年で“無人ジムだからこそ魅力的だ”というイメージを培っていけないかと目論でいます」

 無人であることをマイナスではなく、プラスへと転じていく。「低価格」を維持しながらサービス向上を目指すDXの行方に業界内外から注目が集まる。

後編に続く

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