手にはガラケー
──2010年に「心筋梗塞」で緊急入院されていますが、今は体調管理で気を付けていることはありますか。
「ゆっくりストレスなく寝たいだけ寝るってことですね。仕事ない時は本を読んで朝6時くらいまで起きてます。夜型生活なので『そういうサイクルに付き合いたくない』って言われ、友達が減りました。その流れで7時に『やよい軒』で朝飯食って、寝る前に美味しい青汁を一口飲む。気休めかもしれませんけどね。
マネージャーが『危ないから』ってガスを全部止めちゃったので、電子レンジしか使えず全部外食ですが、そうやって好きなものを食べるのが健康管理ですね」
──最近、表立って活動されてない森本さんを心配しているファンにメッセージをいただけないでしょうか。
「ファンがいるとは思えないけどな……。そおっと消えていってるから。まあ、本当にありがとうってことしかないですね。昔、日活のスターだった長門裕之さんに『役者は将棋を指さなきゃダメだ。シナリオ読めないだろう』って言われて勉強して、3カ月で勝つようになったんです。そした『お前、本読んだな? 卑怯なやつだ』と怒鳴られたけど、家まで連れてってくれて可愛がってくれた。そういう良い先輩に優しくしてもらって。大滝秀治さんも森繁久彌さんもみんなほんとにいい人で、さりげない一言にエネルギーをいただいた」
──なるほど、古き良き時代ですね。今の演劇界をどう見ていますか。
「もう演技の価値観が変わってきてるんです。昔の演技はジェームズ・ディーンのように存在することだった。今は演じ倒すことが演技になってしまった。演じ倒すのは割と簡単だからやりますけども、彼のようにさりげなく存在して、物語の底の底を動かしていくっていうのが役者の演技でした。今はそういうのは時代的に間に合わないね。邪魔ですね。本当に良い時代に役者として楽しめた。その名残を『Qさま!!』とかのナレーションでそろっと出していきたいですね」
そう言い残すと、行きつけの本屋へと向かった。魅惑の声はいつまでも色褪せない森本レオだった。
(了。前編を読む)