国内

《ただ物を運ぶだけだったのに…》闇バイト逮捕者が供述する「騙された」 SNSに増殖する「ホワイト案件」に誘われて指示に従った人たちの顛末

連続強盗事件を受け、捜査会議で訓示する警察庁の谷滋行刑事局長。10月8日午後(時事通信フォト)

連続強盗事件を受け、捜査会議で訓示する警察庁の谷滋行刑事局長。10月8日午後(時事通信フォト)

「案件」とはもともと、解決すべき問題や訴訟事件のことを指す言葉だった。ところが数年前から「案件」といえば、インフルエンサーが商品やサービスのPR投稿をすることを呼び、それが広がって報酬が発生する仕事の一種という意味を持つようになっている。そして今、SNSでは働き手募集の際に「ホワイト案件」と加えることで、ブラックな仕事ではないとアピールされているという。特殊詐欺関連の取材を続けているライターの森鷹久氏が、「ホワイト案件」の書き込みに誘われた人たちの顛末をレポートする。

 * * *
 今年8月以降、首都圏で相次いで発生している連続強盗事件。強盗に入った実行役らが相次いで逮捕され、またしても「闇バイト」に応募して集まった男らであることも判明し、警察庁は被害地域の刑事部長を集めて捜査会議を実施して、捜査関係者に発破をかけたと伝えられている。

「闇バイト」の危険性は、マスコミや捜査当局の発表により周知されてきており、事前に約束された報酬が支払われない、個人情報を渡すことで逆に脅され組織から抜けられなくなるなどの実態は知れ渡っていたはずだった。にも関わらず、なぜ、闇バイトに応募する者が後を絶たないのか。事件を取材している大手紙社会部記者が解説する。

「今回の事件で逮捕された男たちの一部からは、当初は”ホワイト案件だ”と(指示役から)説明された、騙されたという供述が出ています。要は、闇バイトだと知らずに応募し、犯行に加担してしまった、もしくは加担せざるを得なくなった、ということです」(大手紙社会部記者)

 この「ホワイト案件」とは、犯罪にならない仕事のことを指す。対義語は「ブラック案件」であり、特殊詐欺の受け子や出し子、さらに傷害や殺人を伴う強盗などの犯罪がそれにあたるという。

「最近では、SNSを通じた闇バイトや、闇バイトに加担したことで逮捕されたり人を殺めたり大変なことになる、ということがある程度、周知されている。だからこそ、指示役は最初に”ただ物を運ぶだけ”などといって強盗や受け子、出し子ではない”ホワイト案件”であることを強調し人を集めるようになっています。一連の強盗に加担した者の中にも、このように本当に騙されてしまった者が複数人いるとみて捜査が進められています」(大手紙社会部記者)

SNSに増える偽装「ホワイト案件」

 実は筆者も数年前に、なぜ闇バイトに応募し犯罪に加担してしまう者が減らないのか、取材をしたことがあった。当時は、どうしても金に困っている人物や、借金や人間関係に悩み自暴自棄になった人などが応募者の大半で、リクルート側も「いくら(闇バイトのことが)報道されても応募者は減るはずがない」「人間は詰まったら(どうしようもなくなったら)詐欺師でも犯罪者にでもすがりつく」と自信を見せていた。ところがこの数年のうちに、闇バイトのほとんどが、指示役やその上の首領らに「使い捨て」にされることが明らかになると、応募者は激減した。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン