国内

【斎藤応援団1か月密着ルポ】絶対に勝てるはずのなかった男が“悲劇のヒーロー”として兵庫県知事選に舞い戻ってきたワケ

斎藤氏の演説を聞こうと人だかりが

斎藤元彦・兵庫県知事の応援団に話を聞いた

 斎藤元彦・兵庫県知事の勝利は、“日本版トランプ現象”ではないか。2020年のアメリカ大統領選挙で、1年にわたり“トランプ信者”を至近距離で取材したジャーナリスト・横田増生氏が、出直しのために挑んだ選挙でどこまで斎藤氏が支持を広げることができるのかに注目。告示日前から投開票日までの1カ月間、斎藤支持者に密着取材した(本文敬称略、年齢は取材当時)。【全3回の第1回】

 * * *

 マスコミが午後8時に当選確実を打つと、斎藤元彦事務所前に詰めかけた群衆からは「やったぞー!」、「当確だ!」という声とともに、「サイトゥ! サイトゥ! サイトゥ!」というコールが湧き起こった。支援者の中には、感極まって涙ぐむ人もいた。まさかの、“ゼロ打ち”に支持者は大いに沸いた。

 斎藤コールの間に、「マスコミの負けや!」、「(マスコミは斎藤に)謝れ!」という声も挟まった。「マスコミは、ざまあみろだ!」と口にした50代の男性と一緒にいた女性は、スマホで「NHKから国民を守る党」の党首で、今回の知事選に立候補した立花孝志の動画を食い入るように見つめていた。

 投開票日当日、私が斎藤事務所前に到着したのは午後5時過ぎ。ほんの十数人しかいなかった支持者は、当確が出る8時までに数百人に膨れあがった。今回の選挙戦の盛り上がりを再現するような人の増え方だった。

 斎藤が勝利宣言をしたのは午後10時前のこと。斎藤はこう語った。

「今回は、SNS を通じて支援の輪を広げてもらいました。これまで厳しい言葉をいただいたこともあったので、SNSは好きではなかったのですが、SNSを通じて自分のことを見ていただけた。SNSのプラスの面を感じました」

 支持者たちは、スマホを高く掲げ、この歴史的瞬間を動画や写真に記録しようとしていた。その様子は、10日ほど前にトランプが勝利宣言した時の光景と瓜二つだった。

 斎藤支持者が抱く既存のメディアに対する敵愾心は、私がアメリカ大統領選挙を取材した折に接した“トランプ信者”と酷似していた。

 トランプが20年の選挙で負けた後も、「トランプの勝利を110%信じる」と言っていたミシガン州の50代の男性 は、「この選挙は民主党と中国共産党によって盗まれたんだ。両者がグルになって、アメリカの行く手を阻んでいるのは明らかだ」と主張した。どこでそうした情報を得たのか、と訊けば、「ユーチューブやフェイスブックを探せば、いくらでも情報は見つかる」と答えた。彼にとって、トランプを貶める報道をする新聞やテレビは、「フェイクニュース」でしかなかった。

 そうしたパラレルワールドが、兵庫県でも展開されるのかを見極めたい、とそう思い、選挙戦の前から神戸に入り、投開票日まで斎藤支持者を追いかけた。

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン