支持者たちが多く集まった

選挙戦中盤では「メディアの報道は本当に正しいのかどうか。県民の皆さんがご自身でネットやYouTubeを見て調べて判断している。何が正しいのか、何が真実かを、一人ひとりが判断されています」とも

SNSが作り上げた悲劇のヒーロー像

 私が斎藤にインタビューするため事務所を訪れたのは、告示日の数日前。為書きや胡蝶蘭といった選挙事務所につきものの装飾品は一切なく、折り畳みの事務机とパイプ椅子があるだけの殺風景な事務所で、斎藤と一対一で向き合った。その時点で、斎藤の勝利を予測できたものは一人もいなかったはずだ。

 選挙戦が始まる前、政党や団体の支援がなく孤立無援で戦う斎藤が選挙で勝つことがあるとすれば、都知事選で善戦した石丸伸二のようなネットを使った空中戦に頼るしかないだろう、と私は考えていた。インタビューでそう尋ねると、斎藤はこう答えた 。

「もちろん、X(旧ツイッター)やインスタグラム、ユーチューブも使っていきます。確かに、石丸さんの選挙戦はすごいと思いますが、私はSNSよりも、街頭演説の中で、一人でも多くの県民に直接訴えていきたいと思っています」

 さらに、ネット 上に、クラウドソーシング企業のクラウドワークスが、斎藤などの動画の作成を1本当たり1500円で募集しているという広告が残っていることについても訊いた。

「私がそういう募集にかかわったことは一切ありません。クラウドなんとか、という企業名さえも知りません。もちろん、私がお金を支払ったということもない。正直言って、何のことなのか、見当もつきません」(斎藤)

 選挙が始まる前の時点の斎藤は、ネット戦略に積極的ではないことが強く印象に残った。

 今回の勝因は、「斎藤vs.既得権益」という構図を作り上げ、“巨悪”に戦いを挑む孤独な男の復活劇という物語を作り上げたことにある。斎藤が“悲劇のヒーロー”であるという言説がSNS上で拡散されたことで、多くの人の心を揺さぶり、鷲掴みにした。その結果、勝利を手にした。

 斎藤は街頭演説で、「たった一人 で始めた選挙戦だったんです」と語り、「一人ぼっちだった」ことを強調した。「最初に駅立ちをしたときは、本当に怖かったんです。石を投げられるんじゃないか、殴られるんじゃないか、と思っていました」、「県議会からも、職員組合からも、マスコミからも、副知事からも辞めろ。辞めろ辞めろのオンパレードでした」、「マスコミや県議会から斎藤を引きずりおろせという声もあります。しかし、そんな声には絶対に負けるわけにはいかないんです。県政改革を止めるわけにはいかないんです」と、繰り返し語った。

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン