国内

《闇バイト対策に警察が打ち出した「仮装身分捜査」》効果はあるのか?トクリュウ事情を知る暴力団幹部の見解「指示役にたどりつくのは難しい」

政府は17日、犯罪対策閣僚会議で決定した緊急対策に、警察の捜査員が身分を偽って闇バイトに応募する「仮装身分捜査」の早期の実施を明記した(時事通信フォト)

政府は17日、犯罪対策閣僚会議で決定した緊急対策に、警察の捜査員が身分を偽って闇バイトに応募する「仮装身分捜査」の早期の実施を明記した(時事通信フォト)

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、闇バイト対策として警察が打ち出した「仮装身分捜査」について。

 * * *
 12月12日、警察庁の露木康浩長官が記者会見で、「雇われたふり作戦」と名付けた作戦を発表した。相次いて起こる闇バイトによる犯罪を防ぐため、捜査員がSNSなどを通じて闇バイトに応募、身分を隠し、偽の人物の身分証明書を使って架空の人物に成りすまして犯行グループに接触するという「仮装身分捜査」を取り入れた新たな捜査手法だ。

 露木長官は「犯罪の取締りや抑止を図るうえで効果的だ」と述べ、警察がこの作戦を行うことで、犯罪グループが実行犯を集めにくくなる抑止効果が見込まれるが、識者からは「根本的な解決にはつながらない」という声を上がっている。そこで”トクリュウ”(匿名・流動型犯罪グループ)の手口についてよく知るという指定暴力団の現役幹部に、仮装身分捜査について、実際のところどう思うか聞いてみた。その答えは…。

「効果はある」と即答。「指示役にまでたどりつくのは無理でも、その場で事件を未然に防ぐことができるのが重要」という。

 幹部は「事件を未然に防げれば被害が出ないだけではない。闇バイトに応募して集められた実行犯を、事件を起こす前に逮捕できるというのが大きい。人によっては、ホワイト案件かと思って安易に応募したヤツもいるかもしれない。闇バイトとわかっていても、応募したことを後悔しているヤツもいるだろう。身分証明の画像を言われるがまま送ったことによって住所や家族関係がわかってしまい、バラすぞとか、家族に危害を加えるぞと脅されているかもしれない。彼らが強盗犯になってしまうのか、未遂犯になるのか、それとも犯罪行為に手を染めることなく終われるのか、その後の人生が変わる」と話す。自分にも前科があり、前科者ばかりの中で生きてきた幹部の言葉は重い。

 おとり捜査は無理でも、仮装身分捜査ならそれが可能になるのだろう。その違いについて、自民党の前経済安全保障相の高市早苗氏は自身のXで「おとり捜査とは、その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するよう働き掛け、相手方がこれに応じて犯行の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するもの」で、仮装身分捜査は「必ずしも犯罪実行の働きかけを伴わない仮装身分活動」だと述べている。違法薬物や銃器の取引など、通常の捜査手法だけでは摘発が難しい場合に実施されてきたおとり捜査は、相手が実行に踏み切ったところで逮捕する。しかし仮装身分捜査は、警察官が犯罪の実行に加担しないだけでなく、被害や被害者が出る前に事件を防ぐことができるらしい。

関連記事

トピックス

公選法違反の疑いで刑事告訴され、書類送検された斎藤知事(左:時事通信フォト)と折田楓氏(右:本人SNS)
“公選法違反疑惑”「メルチュ」折田楓氏の名前が行政SNS事業から消えていた  広島市の担当者が明かした“入札のウラ側”《過去には5年連続コンペ落札》
NEWSポストセブン
コンサートでは歌唱当時の衣装、振り付けを再現
南野陽子デビュー40周年記念ツアー初日に密着 当時の衣装と振り付けを再現「初めて曲を聞いた当時の思い出を重ねながら見ていただけると嬉しいです」
週刊ポスト
”薬物密輸”の疑いで逮捕された君島かれん容疑者(本人SNSより)
《28歳ギャルダンサーに“ケタミン密輸”疑い》SNSフォロワー10万人超えの君島かれん容疑者が逮捕 吐露していた“過去の過ち”「ガンジャで捕まりたかったな…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
スーパー「ライフ」製品が回収の騒動に発展(左は「ライフ」ホームページより、みぎはSNSより)
《全店舗で販売中止》「カビだらけで絶句…」スーパー「ライフ」自社ブランドのレトルトご飯「開封動画」が物議、本社が回答「念のため当該商品の販売を中止し、撤去いたしました」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン