国際情報

朝露関係が緊密化の裏で「ロシア人観光客の北朝鮮訪問」は期待外れの結果に 自由行動できず貧弱な観光・宿泊施設が敬遠される

「多くのロシア人が北朝鮮を訪れるだろう」と予測していたが…(写真は金正恩氏。朝鮮通信時事/時事)

「多くのロシア人が北朝鮮を訪れるだろう」と予測していたというが…(左から金正恩氏、プーチン氏。写真=朝鮮通信時事/時事)

 北朝鮮がロシアのウクライナ侵攻に兵士を送るなど朝露関係が緊密化している。北朝鮮はロシアのミサイル・衛星技術供与などの軍事協力だけではなく、経済的な見返りも大いに期待しているようだが、後者については思い通りの成果があがっていない事実が明らかになった。

 ロシアの沿海地方政府はこのほど、公式ウェブサイトで、昨年1年間で北朝鮮を訪問したロシア人観光客は1500人だったと発表した。同政府のオレグ・コゼマコ知事は昨年7月、「2024年には数千人のロシア人が沿海地方を通じて北朝鮮を訪れるだろう」と予測していたが、かなり予想を下回る結果となった。

 この理由について、北朝鮮訪問は基本的に団体旅行で、ツアーガイドによる厳しい監視がついて自由行動がほとんどできないことや、通信環境などが貧弱なことなどが挙げられるという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。

 同政府によると、これらのロシア人観光客の多くは、北朝鮮に旅行する前にまずロシア極東部の主要都市、ウラジオストクの旅行代理店を訪れ、北朝鮮のツアーを予約し、航空便で北朝鮮の首都、平壌に向かうとの段階を踏むという。

 それ以外にも臨時列車で訪れた観光客は約300人おり、そのうちの7割が沿海地方以外の居住者だった。

 また、昨年7月22日から8月2日までにはロシアの子どもたち約250人が北朝鮮を訪れ、東部の江原道元山市の国際ユースキャンプを訪問するなど、両国の蜜月関係をアピールするイベントも行われた。これはプーチン大統領と金正恩総書記が昨年6月の首脳会談で合意した観光・文化交流の一環とみられている。

 北朝鮮・ロシア間では昨年12月16日から定期旅客列車が再開され、現在も週3便が運行されていることから、沿海地方政府当局は「今年は北朝鮮に旅行するロシア人観光客の数が1万人に達する」と期待を膨らませている。

 北朝鮮は今年4月には6年ぶりに平壌マラソンを再開するほか、6月には東部沿岸に建設していた大規模リゾート「元山・葛麻海岸観光地」のオープンを発表しているなど観光に力を入れており、その中核となるロシア人誘致に懸命になっている。

 しかし、ロシアでは富裕層を中心に、黒海やトルコ、エジプトなどの観光地のグレードが高いホテルへの滞在が人気となっており、北朝鮮の貧弱な観光・宿泊施設では多くのロシア人観光客を引きつけるのは簡単ではないとみられる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン