春節の大移動は始まっている(写真/共同通信社)

春節の大移動は始まっている(写真/共同通信社)

日本の隅々までウイルスが運ばれる可能性

 春節は8日間だが、連休をまたいで長期休暇を取る人が多く、中国当局は1月14日から2月22日までの40日間で、のべ約90億人が帰省や旅行のため国内外に移動すると予測している。飛行機の利用者数は、9000万人を超える見通しだという。

 旅行先として最も人気なのが日本だ。

 インバウンド支援を行うインタセクト・コミュニケーションズによれば、春節に海外旅行を検討している中国人の約25%が、訪日を計画しているという。

 東京や大阪といった大都市や、京都や沖縄、北海道などの定番観光地には、春節の長期休暇で多くの中国人観光客が押し寄せることになるだろう。

 さらに今年は、例年とは異なる観光地の盛り上がりが予想されている。

 アジア最大のオプショナルツアー予約サイトを運営するKKDAY JAPANによると、今年の春節は「東北」をはじめ、地方を訪れる中国人が増える見込みだという。同社が発表した「2025年春節 人気急上昇体験先ランキング」では、4位に「福島」、3位に「岐阜」、2位に「宮城」、1位に「山形」が入った。山形と宮城をセットで訪れるバスツアーが大人気なのだとか。

 日本経済にとってインバウンドの増加は喜ばしいが、hMPVの感染が広がる中国から多くの観光客が来日するとなれば、不安も募る。ましてや地方にも目が向けられた今年は、日本の隅々までウイルスが運ばれる可能性も出てきた。

 上氏はこう言う。

「hMPVの潜伏期間は2~3日とみられ、発症後も症状が軽く感染を自覚しないケースもあるでしょう。感染に気づかずに来日した中国人観光客によってウイルスが持ち込まれ、日本各地でも大流行する可能性があります」

 非常に強い感染力が、新たなパンデミックを呼ぶという。

「hMPVにかかり症状が出ているときは、ほかの感染症同様に体にダメージがある状態といえます。つまり、体が弱っていて感染しやすく、インフルエンザや新型コロナウイルスなどに続けて感染する危険性が生まれます。そうなった場合、症状が長引いたり、重篤な症状に陥ったりする可能性もあります」(上氏)

 各地で感染者が増えれば、医療機関がパンクする恐れもある。薬が不足すれば、適切な治療ができないことで重症化するケースも予想できる。

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