ライフ

【新刊】透析患者の夫を看取った堀川恵子氏が矛盾だらけの透析医療現場を歩くノンフィクション『透析を止めた日』など4冊

札幌からのユーモラスな近況報告。“失われた体力を求めて”励んだ日々

札幌からのユーモラスな近況報告。“失われた体力を求めて”励んだ日々

 1月が終わってもまだまだ寒さが続く。こんなときは、暖かい部屋のなかで本を読み、インプットに勤しんでみては。おすすめの新刊を紹介する。

『キミコのよろよろ養生日記』北大路公子/集英社/1870円

 キミコさんは術後の化学療法の副作用で根こそぎ体力を奪われる。階段は登山であり、ラジオ体操をすれば息も絶え絶え。編集者から送られてきた伊能忠敬の万歩計や縄跳びで、体力回復に励む。この間に母上を看取ることにも。編集者2人にしぶしぶ付き合った仕上げの藻岩山登山後のビールの美味しいこと。『失われた時を求めて』のマドレーヌより、はい、やっぱビールですよね。

塗炭の苦しみの中で逝く腎不全患者。妻が亡夫に供える「腹膜透析」という光

塗炭の苦しみの中で逝く腎不全患者。妻が亡夫に供える「腹膜透析」という光

『透析を止めた日』堀川惠子/講談社/1980円

 大宅ノンフィクション賞受賞の場に著者は透析中の夫(NHKの敏腕制作者・林新氏)の元から駆けつけた。夫は実母からの移植腎で9年の小康状態を得るも2016年透析再開、翌年逝去。夫婦の闘病&愛情物語が前半で、後半では矛盾だらけの透析医療現場を歩く。腹膜透析という選択があったとは。車で送迎し難いという理由でその病院を避けた。深い悔恨を感じ胸が詰まった。

お金に人生を左右されたくないからこそ、お金が欲しいと思う人々の悲哀と希望

お金に人生を左右されたくないからこそ、お金が欲しいと思う人々の悲哀と希望

『財布は踊る』原田ひ香/新潮文庫/781円

 発覚したダンナの無自覚なリボ払い(=高金利の借金)、金融商材などに騙される若い男達の一攫千金の夢、1円も貯金できないアラサー女性達の奨学金返済地獄など、虫瞰ではお金に人生を左右される人々の群像小説で、鳥瞰ではヴィトンの長財布が旅するリレー小説だ。ゴクゴク読めるのは、どの人物にも著者が寄り添っているから。原田さんのマネー小説はやっぱり面白い。

著者夫婦が「ときどき」をやめ、「いつでも、京都人」になったワケ

著者夫婦が「ときどき」をやめ、「いつでも、京都人」になったワケ

『ときどき、京都人。』永江朗/小学館文庫/682円

 京都にも家を構えることにしたのは茶の湯を極めるため。町家を買い、1年かけて改装。月に7日から10日ほど滞在し、町名を記すホーローの看板の歴史や、京都がパンの街でもあったことなど、街歩きのトリビアを愉しむ。が、最後に思いがけない転生が。満月の鴨川の土手で足を滑らせアキレス腱断裂。通い京都人をやめ、定住の道を選ぶのだ。野菜と豆腐の美味しさが羨ましい。

文/温水ゆかり

※女性セブン2025年2月6日号

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン