契約解除の通知が届いた(写真提供/イメージマート)
元刑事は「逮捕されたくなければ、クレームも問い合わせもせず、即刻そこを引き払え」とD氏に忠告したという。「どこからかオレの名前が出て、警察が不動産屋に問い合わせんだろう。住み続ければ、オレだけでなく知人も名義貸しで逮捕される」とD氏は契約を解除して家を出た。あとで他の詐欺事件で捕まった知人のつながりから自分の名前が出たことを知るが、知ったところで退去しなければならなかったのは同じだ。
「パトロンになった男が好きな女のために部屋を借りる、なんてよく聞く話だろう。だがヤクザは、他人の名義の部屋に住んでいる時点でアウトなんでね、(D氏)
昭和のヤクザ映画みたいだろ
暴力団組員の住居事情は切実だ。暴対法や暴排条例以前から自分名義の不動産を所有していた、相続した物件に住んでいるや家族と同居、所属する組事務所や親分の家に居候というのはいいだろうが「友人知人が所有している物件に住むという場合は、暴力団への利益供与にあたる可能性が出てくる」という。「もし相場より安く借りていたとすれば、それこそ利益供与として所有している友人知人の所に警察が行くことになるな」とD氏はいう。「昭和の時代からあるヤクザの幹部に家を貸していた知人は、暴対法や暴排条例が出来てから、再三警察にヤクザを家から退去されるよう警告された。古い友人だし、高齢だからと拒絶していたが、最後には逮捕も辞さないという警察の姿勢に、ヤクザの方から出て行ったという話もある」。
「コロナ禍前なら寝泊まりできる事務所もあったろうが、そいつはどこに行ったのか。他の組員の部屋に転がり込んだか、女の所に居候したのか。昭和のヤクザ映画みたいだろ」とD氏はぼやく。
カタギになったからといって、すぐに自分名義で物件を借りるのは難しいという。「元暴5年条項があるから、しばらくは銀行の通帳が作れない。部屋を借りても、家賃を引き落とす口座がないんで自分の名前ではなかなか。大家に毎月、家賃を振り込むという物件ならいいが、そういう物件を探す方が難しいだろう。数年は今のままだな」という。
法律に違反したら微罪でも即逮捕につながるヤクザたち。カタギになったからといって、生活が激変することはないが「ネット注文できるような全国の旨い物を探すのが楽しい」とD氏は笑った。