引きこもり状態が続く根本的な「原因」
UWさんは小児期からADHDによる不注意症状がみられたが、元来の優秀さによって学生時代までは自分で問題をカバーできていた。ところが社会人になると、要求される量も質も負荷の大きいものとなり、仕事上で不注意によるミスが目立つようになった。このような経過については、不注意症状が中心のADHDによくみられるパターンである。
本人が専門外来を受診し投薬が開始されたが、副作用があると言って、短期間で薬物療法は中止となった。もともとの性格も影響して、これ以後まったく拒否的というわけではないものの、医師を含めて他人の意見を聞こうとすることはなく、自分の体調へのこだわりから抜け出せない状態が長期間にわたって持続し、引きこもりの状態が続いている。
治療が失敗しやすい人の「思い込み」
治療困難な例として、最も頻繁にみられる問題は当事者本人の「信念」や「思い込み」であることが多い。自分の知識に自信のある人は、医師の意見を信用しないことがある。医師の方針を無視し、自分の思い込み服用する薬を決めているケースもある。
脳内の「現象」についてはさまざまな報告があるが、精神科に関連する症状の説明は、現状ではほとんどすべてが「仮説」に過ぎない。脳の扁桃体が精神現象に重要な役割を持つことは確からしいが、それは確立した理論とまでは言えない。
こういったケースにおいては、患者さんの思い込みを訂正することは容易でない。詳しく説明をしても、信頼関係を築くことができないばかりか、外来が“対決”の場になってしまうこともある。さらに医療側が真摯に治療にあたっていても、常に否定的に見る傾向の強い人の場合、治療は失敗しやすい。
(了。第1回を読む)
大人のADHDの特徴とは(内閣府大臣官房政府広報室「政府広報オンライン」より)