爆笑問題・太田光と玉袋筋太郎が珍しく共演(イラスト/佐野文二郎)
放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、爆笑問題の太田光と玉袋筋太郎について。
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元祖テレビっ子、ラジオ深夜放送世代の我々団塊人間達で話すと「この節はBSだネ」の声も多い。私も中堅芸人達の、この道だけを究める的な番組をよく見がち。
先陣を切ったのは玉袋筋太郎の『町中華で飲ろうぜ』だろう。「633(ml)は大人の義務教育」なる名言も残した。ビールの大ビンのことだ。
東京への愛が色濃くひたすら歩くのがバナナマン日村の『ウォーキングのひむ太郎』。私も知っている路地などが出てきて楽しい。
立ち喰いそばだけを食べてまわるドランクドラゴン塚地の番組も捨てがたく、カンニング竹山の昼飲み番組のトークが意外に奥深く聞き入ってしまう。高円寺、阿佐谷なんて所は仕事帰りのおやじやら働きに出ない若者達が昼日中から後めたさも無く大らかに飲んでいる。うらやましい。
そんな中、スタートはつまずいたもののずっとテレビの中央を走って来た爆笑問題の太田光が、数年前より名古屋で『ゴゴスマ』の石井アナと「レバニラ」だか「タラレバ」だかよく覚えられないタイトルの番組を始めた。東京ではまったく見られなかったものが、この度BS-TBSで放送開始。それを祝してコラボ番組、太田が玉袋の「町中華」にゲスト、玉袋が『デララバ』のゲストとコアで古いお笑いファンにとっては夢のマッチメイク。「町中華」に旧友であり盟友であった江頭2:50が出演し、30年ぶりに近い共演に感極まって号泣なんてシーンもあった。この30年の間に「浅草キッド」にも「大川興業」にも色々あった。私は師匠筋にもあたるのでよく知りすぎている感も……。
さぁそこで真打登場、太田光が妻社長もなく田中もなく、たった一人でアウェイ番組に立ち向かえるのか。「キッド」と「爆笑」も若い頃からバチバチあって“東京漫才の頂上決戦”やら“真のたけしイズムはどっちだ”などあおりにあおられ、当人同士は大したライバル意識はないものの緊張をしいられた。私があおったという説もありますが。
会えば互いに東京風味の照れで「相方のチビの悪口」やら「関西なんて大嫌いだ」なんて本音全開。さすがに下戸の太田も玉袋と会えて喋れた嬉しさからビールをキューッ。BSでしか見られない男同士のいいシーン。
きけば太田クンも(クンなど付けられる年じゃない)還暦だとか。彼らが20代の頃からあだ名の「センセー」で呼ばれる私も、もう喜寿である。ひたすら東京の芸を愛する。雪解けするオールドボーイ。
※週刊ポスト2025年6月20日号