高齢の父を引き取りに来てくれと警察から連絡が(写真提供/イメージマート)
「少し認知症の気配のある義父が、いつも家を一人で黙って飛び出しては行方不明になるんです。あまりに恥ずかしい話なんですが、毎回、風俗店とかラブホテルとか、そういった場所で発見され、警察から連絡をいただくんですよ。かといって、施設に入れるほど認知がすすんでいるわけでもないし、まさか部屋に鍵をかけて閉じ込めておくわけにもいかない」
深刻な口調で筆者にこう訴えるのは、福岡県在住の会社員女性(50代)。2人の子供と夫、夫の父親の5人暮らしで、この1~2年ほどの間に、義父に徘徊癖や、何度も同じ事を言うなどの認知症の傾向が現れ始めたという。当初、それは「しょうがないこと」と温かい目で見守っていたが、ある日、義父宛にクレジットカード会社から覚えがない請求書が届いたことで、事態の深刻さを受け止めざるを得なかった。店側に “拒否してほしい”とお願いしているのですが、向こう側も”商売だ”の一点張り。警察も民事に介入できないと真面目に取り合ってくれません。恥ずかしいし、バカみたいな話だと笑われるかもしれませんが、すでに数百万円の”被害”があり、家族にとっては本当に深刻な状況なんです」(会社員の女性)
義父は、医療機関で「認知症」と診断されてはいない。また、日常的な会話も問題なく出来るため、家族が義父の行動を制限することが事実上難しい状態なのだという。こうした「境界」状態にある人々こそが、今SNSで狙われやすいターゲットにされている。
経営者美女から”投資”に誘われた高齢の父
「とあるSNSをやっていると、知人のお父さんらしき人が自分のアカウントで”100万円をもらった”と話す、自撮りの動画をアップしていたんです。お父さんはもう70代だし、なんか様子がおかしいと思って友達に連絡したんです」
都内在住の公務員男性(30代)がSNSを眺めていて偶然見つけたのは、友人の父親が「100万円当たった」とカメラに向かって話す不自然すぎる映像だった。SNSでよく見かける、こんなにお金が儲かりましたと現金を見せびらかす動画によく似たものだが、そういった動画の主はたいてい、自称インフルエンサーや自称マネー講師などに指示されて投稿しており、実際には損をしていることが多い。ほとんど詐欺まがいの勧誘に騙された人たちが手を出しているパターンがほとんどだ。スマホ操作も覚束なかった高齢者が、なぜ、そんな映像をアップしたのか。その理由はすぐに明らかになった。友人の父親はすでに何人もの、SNS上の架空女性に騙され、そのときすでに、数百万円を失っていたというのだ。