インドのナレンドラ・モディ首相とヨグマタ・相川圭子氏(2023年の国際ヨガデー)
究極のサマディを成就したヨガ・瞑想指導の世界第一人者、ヨグマタ・相川圭子氏が、6月21日に米・ニューヨークの国連本部で開催された「第11回国際ヨガデー」に特別ゲストとして招かれた。国際ヨガデーはインドのナレンドラ・モディ首相が「ヨガを実践し世界に啓蒙する日」として提唱し、2014年12月の国連総会で議決された国際的なヨガの祭典。2015年より毎年夏至頃に、国連本部および世界各地で開催されている。
2023年の国際ヨガデーでは、相川氏がモディ首相の頭に触れて、ヒマラヤ大聖者として“祝福”を授ける様子が各国のメディアで報じられた。相川氏はインドやネパール政府の招聘でこれまでも3回、国連で瞑想指導をしてきた実績がある。
モディ首相に祝福を授ける様子は全世界で報じられた
そうした縁もあり、相川氏は今年4月にもニューヨークで行われた国連協会映画祭(UNAFF)主催イベントに特別ゲストとして登壇。会場では、昨秋の同映画祭でも選出された『DEATH BY NUMBERS』が上映された。同作は全米を震撼させたフロリダ州パークランドのマージョリー・
銃暴力に対する感覚が麻痺し、心に傷を負う若者が増え続ける米社会。イベントには銃乱射事件の生存者かつ『DEATH BY NUMBERS』の原案・出演者でもあるサマンサ・フエンテス氏も招かれ、深刻な社会問題となっている若者のメンタルヘルスをテーマに有識者とパネルディスカッションが行なわれた。
相川氏は平和への祈りを捧げると、「無限の苦痛を与える暴力行為を排除し、調和を図るにはどうしたらいいでしょう。それには根源となる苦しみや恐れ、トラウマなどを断ち、憎しみのエネルギーを肥大させない。さらに平和のエネルギーへ変換できるよう促すことが必要です」──そう穏やかに語りかけ、「瞑想」の恩恵を説いた。
「瞑想とは、善い心、善い行いへと魂を導く“道しるべ”。心と体を浄めて、愛を育みます。破壊的な衝動を持て余し制御に苦しむ人は、自分に対する周囲の反応にも過敏になっています。どうケアしていいかわからないと距離を置かれたら、彼らはよりナーバスになって憎しみを増幅させていく。憎しみの連鎖がますます心を蝕むのです。まず、彼ら自身が瞑想で癒しを得て心を整えることです。周囲からも瞑想を通じて思いやりの波動を送り、変容を促します。瞑想は私たちすべてに通じる、人格を高める術なのです」
国連協会映画祭主催イベントに特別ゲストとして呼ばれた相川氏(2025年4月、ニューヨーク)
イベントでは次期ハイチ大統領候補のジュード・エリー氏(相川氏の左)やUNAFF創設者のジャスミナ・ボジック氏(左から2番目)らとパネルディスカッションに参加
会場では、相川氏のもと実際に瞑想をする時間も設けられた。
「世界では命を奪う争いが絶えません。ですが、瞑想により調和の波動で満たすことで、その流れが変わる可能性があります。毎日、朝晩5分間、平和を祈り、心を鎮める静寂の時間を持ってください」
瞑想の後、相川氏は会場を見渡し、「“ヘイト”ではなく心に“愛”を持ちましょう」と来場者へやさしく呼びかけた。
上映会に先駆けて、サマンサ・フエンテス氏(以下、サム氏)との対談も行なわれた。相川氏は彼女に気遣いながら、心の状態について慎重に質問を重ねた。銃弾を受けた脚に古傷が残って痛みを感じる日もあり、精神の回復は「まだ半分くらい」というサム氏。事件から7年の月日が流れたが、目の前で友人2名が人生を奪われ、「なぜ私は生き残ったのか」「なぜ自分はこの傷を負ったのか」と自問する日々が続いていると明かす。高校卒業後はフロリダから離れ、ニューヨークで学生生活を送っている。
「事件の記憶がいまだに生々しく鮮明なため、その対処に苦労しています。夜ベッドに入って眠る前、緊張やストレスを感じる時、事件についての話題に触れられた時に冷や汗をかいたり、震えてしまうことも……。周囲への警戒心も強く、楽しもうとしても楽しめない、社交的になれない時もあります」
そう打ち明けたサム氏は、相川氏との対談後、心と体の調和のためにヨガや瞑想をもっと深めたいと語った。
相川氏は真剣な表情でサム氏と向かい合い、その心の声に耳を傾けた
会場では相川氏とともに瞑想をし、祈りを捧げる時間も
相川氏はぬくもりのこもったまなざしで彼女を見つめ、慈しむように抱擁すると“祝福”を授けた。時折表情を曇らせながらも冷静さを保っていたサム氏も、相川氏に頭を触れられると無邪気な少女のように微笑んだ。そして目と目を合わせて、笑顔を交わしたふたり──。相川氏から注がれた愛で、サム氏の張りつめた心がほどけた瞬間だった。
サム氏に祝福を授ける相川氏
取材・執筆/渡部美也
撮影/福田直記