2025年7月21日で開館29周年を迎える香美市立やなせたかし記念館アンパンマンミュージアム(やなせたかし記念館アンパンマンミュージアムインスタグラムより)
現在、玩具と並んでアンパンマンビジネスを支えるのが、ミュージアム事業です。1996年にやなせたかしが故郷の高知県香美(かみ)市にやなせたかし記念館を開業したのがアンパンマンミュージアムの源流です。高知市内から自動車で1時間弱かかる山間の川辺にありますが、開業当初50日間で来客数が10万人を突破し、今では高知県の重要な観光名所になっています。
全国5ヵ所にアンパンマンこどもミュージアムを展開しているのが株式会社ACM(アンパンマンチルドレンズミュージアム)です。2007年に横浜、2010年に名古屋、2011年に仙台、2013年に神戸、2014年に福岡でミュージアムがオープンし、いずれも年間数十万単位の集客があります。横浜のミュージアムは初年度に年間集客数が100万人を突破しました。神戸も開業10年あまりで累計集客数が600万人を突破、東日本大震災直後にオープンした仙台も開業12年で400万人を超えています。中山氏の試算でも、コロナ禍以降、最も伸びているのがミュージアムのビジネスだそうです。2023年度は43億7200万円を売り上げました。年間集客数は合計300万人を超えるときもあります。
2014年8月にYahoo!ニュース「THE PAGE」の取材に答えたACMの渡辺一彦社長(当時)によれば、「アンパンマンの人気は根強く、この30年近くアンパンマングッズ市場は1500億円を下回ったことがない」とのこと。中山氏が指摘するように、国内アンパンマン経済圏の規模は年間1500億円プラスαというのが妥当な数字のようです。
(第2回につづく)
【著者プロフィール】柳瀬博一 (やなせ・ひろいち)/東京科学大学教授。1964年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。日経マグロウヒル社(現・日経BP社)を経て、2018年より現職。著書に『国道16号線──「日本」を創った道』など。