山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
かつて芸妓や遊女が集まる“花街”として栄えた静岡県浜松市千歳町。複数のスナックを構える低層の雑居ビルや居酒屋がひしめくこの街に、切羽詰まった声が響いた。
「救急車! 救急車!!」
時は7月6日の日付が変わった頃、レンタカーに乗った山下市郎容疑者(41)が、ガールズバー店員の伊藤凛さん(26)を連れてJR浜松駅近くの駐車場に現れた。車を降りた男が向かった先は、彼女が勤務するバーだ。
「山下容疑者は湾曲した刃が特徴の“ククリナイフ”を両手に持って店に入店。店に入るとすぐに店長の竹内朋香さん(27)を背中から何度も刺し、それを見て店外へ逃げようと試みた伊藤さんも連続して襲った。犯行はものの数分の間の出来事でした。
また3人は店で面識があり、男は常連の客だった。伊藤さんは男の“指名キャスト”で、誘われて店外で食事などをすることもあったそうです」(大手紙社会部記者)
すでに終電の時間も超え、飲み歩く酔客もまばらな時間。このとき周囲に響いた“断末魔”は近くにいた人たちを一瞬にして恐怖に陥れた。
「1時前に『ギャー!!』と女の子の声が聞こえました。その後、店員の子たちが2〜3人パニックになって逃げ惑っていたかと思うと、悲鳴が途絶えたんです。様子を見に行こうとも思いましたが、すごく怖くて……。
『近くのガールズバーが襲われたらしい』と噂が聞こえてきて、1時半頃になると救急車やパトカーが何台も集まってきました。そして担架がふたつ運ばれていった。それを見て『ああ、2人やられたんだ』と思ったのを覚えています」
NEWSポストセブンが入手した現場付近の防犯カメラ映像では、「救急車!」と叫びながら助けを求める女性キャストらしき姿や、2時27分に現行犯逮捕された容疑者が警察官に連行される様子が確認できる。近隣住民によれば、バーの周辺には「そこらじゅうに女の子の服の切れ端が散らばって、血溜まりが5か所くらいあった」といい、犯行の壮絶さを物語る”形跡”が一目でわかるようだったという。