会談は実現するのか(左から金正恩氏とトランプ氏/AFP=時事通信フォト)
米国有数の北朝鮮専門家で米国戦略国際問題研究所(CSIS)韓国部長のビクター・チャ氏は、このほど開催された同研究所の討論会で、ドナルド・トランプ米大統領が10月末に韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席前後に、板門店で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と会談する可能性があるとの見通しを明らかにした。
トランプ氏は2019年6月30日、米大統領として初めて南北境界線を越えて板門店に入り、金氏と会談をしている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
トランプ氏が金氏と会見する理由についてチャ氏は、北朝鮮はウクライナ戦争でロシアを支持しているが、北朝鮮とロシアの緊密な関係は朝鮮半島だけでなく、中東を含む他の地域の安全保障にも負の影響を及ぼす可能性があると指摘。
ロシアと中国が、今後の米軍によるイラン政権の完全な崩壊を防ぐために、北朝鮮をイランの軍事支援の代理人として利用する危険性も捨てきれないとしている。
金氏がトランプ氏と会見する理由についてチャ氏は、米軍が今年6月22日にトランプ氏の命令で、「イランの核施設3か所をGBU-57を含むバンカーバスターで攻撃し、イランの核開発計画に大きな打撃を与えたことを踏まえ、米軍による北朝鮮攻撃を回避する必要がある」と説明している。
一方、韓国の大手紙「朝鮮日報」が韓国の外交筋の話として報じたところによると、トランプ氏は7月末、米韓が関税交渉で妥結する直前に韓国側代表と面会した際、「金正恩は元気か?」などと問いかけたという。韓国交渉団は事前に、米側の追加要求や強硬姿勢を警戒していたが、金正恩総書記の近況を問われたことで当惑し、トランプ氏の真意を疑ったほどだったと同紙は報じている。
また、金氏の妹で朝鮮労働党副部長の金与正氏は7月29日、米国に対する談話を発表し、非核化協議については断固拒否するとする一方で、トランプ氏と金正恩氏の「個人的関係は悪くない」と述べるなど、今後の首脳会談実現について含みを残している。