記者会見する静岡県伊東市の田久保真紀市長(時事通信フォト)
学歴詐称疑惑によって全国的に知られるようになった伊東市の田久保眞紀市長は、過ちを認めないまま、自分は大きな敵と戦っているとSNSでにおわせている。当初の疑惑だけでなく、田久保市長の疑惑への言動が、さらに全国的な関心を集めている。臨床心理士の岡村美奈さんが、辞職撤回、百条委員会、SNSと続く田久保市長の主張について分析する。
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どれほどメンタルが強いのか。8月16日早朝、静岡県伊東市の田久保眞紀市長が自身のXへ投稿。「騒動の全容がやっと見えてきました。事実関係に基づいてその目的を明らかにしていきます」というもので、自分の疑惑を棚上げし、嵌められた、陥れられたと陰謀説でも主張したいようだ。そのやり方はまるで下手な「ソフィスト」だ。
ソフィストは詭弁家という意味で使われているが、本来は古代ギリシャで弁論術などを教えていた知識人たちのことをいう。彼らは非論理的で道理に合わなくても、相手を論破したり自説を通すために、論点をすり替え、相手の意見を意図的に歪曲、誇張して攻撃し、選択肢を限定させて二者択一をせまるなどのテクニック、詭弁を弄した。田久保市長が13日、伊東市議会の百条委員会で頻繁に用いたのも詭弁のテクニックの1つ、論点のすり替えだ。
東洋大学卒業をめぐる学歴詐称疑惑で、7月中に辞職し出直し選に出馬すると言っていた田久保市長。会見には謝罪する気も反省する意思もないと思わせるピンクのジャケットで現れ、世間を騒がせた。ここで素直に謝罪していれば、ここまでの騒動にならなかったのだが、彼女は全国ネットで知名度を上げるチャンスでもあると考えたのだろうか。辞職すると思われた7月31日の会見で辞意を翻し続投宣言した。
13日の百条委員会、なんとか真相を聞き出そうと手を替え品を替え様々な方向から質問を浴びせる委員たちを前に、彼女は落ち着いていた。後ろには弁護士が同席。背面を守られているというのは本能的に安心材料になる。ここまでの状況で真向から言い合えば議論には勝てない、百条委員会で宣誓した手前、虚偽の証言をすれば罰則が科せられることもある。そこで彼女は論点をすり替えたのだろうか。焦点となった卒業証書とされる資料は、刑事告発されたことなどを理由に提出を拒否。度々弁護士に助言を求め「出したいとか出したくないという希望ではない」と、自分の意志と切り離して説明する。