ハロウィーンの2024年10月31日、封鎖された東京・歌舞伎町の広場(時事通信フォト)
東京、新宿の歌舞伎町にゴジラのオブジェがのった新宿東宝ビルが開業して10年が経った。開業からしばらくして、ビルの東側の路地に集まった若者たちが自撮り写真や動画をSNSへ投稿し始めた。拡散された投稿を見てやってくる人が増え、東側のシネシティ広場も含め「トー横」、そこにいる少年少女たちを「トー横キッズ」と呼ぶようになった。だが、集まる未成年たちが犯罪に巻き込まれる事件が後を絶たず、警察や行政による見回りが繰り返されているため、現在のトー横に「キッズ」の姿は往時ほど見られない。ところが、本家が縮小傾向にある一方、全国各地にローカライズされたトー横が出現している。ライターの宮添優氏が、地方都市に出現しているローカル版トー横についてレポートする。
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九州北部某市にある市内で一番大きな駅にも関わらず、午後8時を過ぎると周囲から人影は消え閑散としている。ところが、その駅からすぐ、公立図書館の裏手にある駐車場から「キャハハ」といった若者の声、そして、スマホで流しているらしい何かしらの音楽も聞こえる。
「ここ数ヶ月ですよ、中高生のような若者が夜になるとやってきて、十数人でたむろしている。酒を飲んだりタバコを吸ったり、スマホから音楽を流して踊ってみたり。暴走族とも違うけど、みんな髪の毛をピンクや青に染めていてね、ああ、こんな田舎で、都会の子を真似しているのかと、テレビを見て思ったね」
こう話すのは、付近のコンビニ店員。何度か、図書館裏にたむろしていた明らかに未成年と分かる若者が酒やタバコを購入しにきたことがあった。断ったところ暴言を吐かれたり、スマホで無断撮影された経験があるというが、店員はこの若者たちが「トー横」に集う若者を真似しているのではないか、と感じている。
閉鎖されて転々と移った末に戻ってきた
「トー横」とは、東京・歌舞伎町にある「東宝ビル」横にある広場のことで、そこに集う若者は「トー横キッズ」と呼ばれている。家や学校などに居場所がなく、夜な夜な集まってくるのは主に中高生ぐらいの年齢の子供達で、小学生がやってくることもあるという。「トー横」について取材する民放社会部記者が解説する。
「トー横では、子供たちが酒を飲んでタバコを吸い、市販薬でオーバードーズをやってみたり、大麻やコカインなどの違法薬物の売買、未成年者の売買春も横行していると言われています。何度もマスコミで取り上げられたり、行政による広場の封鎖などもあり、若者は一時的に減っていました。しかし、しばらくすると再び若者が集まりだす、ということが繰り返されています。その様子を見ようと日本人だけでなく、外国人観光客も訪れています」(社会部記者)