「コールドスリープ」を発表したPerfumu(公式HPより)
人気者がその活動を止めると発表するとき、「活動休止」「解散」「卒業」など様々な表現で発表されてきた。どんな言葉で伝えられても寂しさを感じさせるものだが、3人組テクノポップユニットのPerfumeがメジャーデビュー20周年記念日に発表したコールドスリープ宣言は、寂しさだけではない、ちょっと不思議な感覚をおぼえさせた。臨床心理士の岡村美奈さんが、「コールドスリープ」という言葉が使われたことによる効果を分析する。
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“コールドスリープ”という言葉を用いて、3人組テクノポップユニットPerfumeが12月31日をもってグループ活動の休止を発表した。活動休止ではなくコールドスリープ(人工冬眠)とは、Perfumeが表現してきた世界感を感じさせる粋な言葉選びだ。
例えばスーパー銭湯アイドルの「純烈」のような昭和を感じさせるグループがこの言葉を使っても似合わないだろう。だが彼女たちが表現してきた世界感にはぴたりと当てはまる。彼女たちの歌やダンス、最新のCG技術を使ったパフォーマンスや映像にふさわしい感じがするのは、活動休止という言葉よりSF映画などでよく使われてきたコールドスリープだ。それは感性という主観的な感じ方を研究する「感性心理学」みたいなもので、物事をどう感じるのか。その感じ方がどのように成り立っているのかに関係する。Perfumeの持つ唯一無二で独特の世界感が好きなファンは、この言葉に違和感がなかったはずだ。
この言葉には彼女たちの思いも沢山つまっていたようだ。公式サイトで発表されたコメントを読むと、そう表現した意図がよくわかる。コメントの文章には「自分たちが胸を張って”輝いている”と思えるこの瞬間を刻むため、私たちは2026年からPerfume一度 コールドスリープ します」とある。
NHKの番組「サイエンスZERO」では、コールドスリープを”人工冬眠”と呼んでいた。究極の省エネ状態で生き抜く方法であり、時間を超えて冬眠した時そのままの状態を維持できるもので、実現に向けて研究が進められているという。Perfumeの公式サイトのコメントには、「『輝いている私たちを歴史に残すこと』 それはPerfumeの夢のひとつでした」と書かれている。輝いている自分たちの姿をそのまま人々の記憶に残しておきたい、そう願ったからこそ、彼女たちは活動休止という言葉を使わなかったのだろう。