ロゴがあった当時(協会のSNSより)
「安心して競技に打ち込める環境が整うよう願っております」
ポーラの回答はこう続く。
《今回、当事者の意向に沿い調査が終了された旨の報告を協会から受けました。それに伴いハラスメント有無の事実確認が明確にならない状況を踏まえ、契約解約に至りました。
ハラスメント有無の事実確認が出来ない状況自体が、弊社がスポンサーとして支援を行う上で大切にしている「アスリートの皆様が心身ともに健康で、安心して競技に打ち込める環境」とは言えないと判断し、スポンサー契約の解約に至っております》
これは、さまざまな悪条件を乗り越えて大きな成果を成し遂げたフェアリーの選手たちに冷や水を浴びせるものではない。問われるのは、選手を守り育てる責任がある日本体操協会の姿勢だ。
協会は、内部では以前から問題視もされていた村田氏の指導姿勢を黙認し、ボイコット事件発生後も本格的な真相究明に着手せず、大会の結果が出たタイミングで「新体操ムラの常識」を押し通そうとした。対するポーラは、「それは選手たちのためにはならない」という世間の常識を突きつけたのだ。
第2の質問として、筆者は「選手や関係者にメッセージがあれば教えてください」とも問うた。以下は、ポーラの回答だ。
《これまでポーラは約18年にわたり、フェアリージャパンの皆さんのひたむきな努力や、美しく力強い演技に心を動かされ、同じ夢を応援してまいりました。
今回の判断はあくまで企業としての責任に基づいたものであり、選手一人ひとりへの尊敬と応援の気持ちはこれからも変わることはありません。アスリートの皆様が心身ともに健康な状態で、安心して競技に打ち込める環境が整うよう願っております》
問題が表面化したことで、当事者の選手たちが練習環境の改善を勝ち取れたとしても、事実関係が明らかにならなければ再発防止策の整備につながらない。厳しい競争を勝ち抜くトップ選手であればなおさら、厳しい指導者による指導が「ハラスメント」と評価される事態は起きやすい。
将来の被害者を極小化する努力を重ねるための健全なチェック体制を整えるために、ポーラの決断は、スポーツの協賛企業のありかたに、一石を投じようにも思える。
(前編から読む)
取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)
※週刊ポスト2025年10月10日号