無邪気に野球観戦を楽しめなくなった(写真提供/イメージマート)
誰でも気軽に画像や動画を編集、SNSへ投稿できるようになった結果、大量に存在するコンテンツの一部を見るだけで、すべてを理解したかのように騒ぎ立てる傾向が強くなっている。その影響なのか、無心にスポーツ観戦するのも難しくなってしまった。ライターの宮添優氏が、シミュレーションをしてから野球観戦へ行くようになったり、母校の応援も全力でしづらくなってしまった様子をレポートする。
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プロ野球のペナントレースもいよいよ最終盤。プレーオフ進出をかけた「Aクラス」を争う熱戦が繰り広げられている。都内在住の会社員もつい先日、贔屓球団の応援のため、友人と二人で関東の某球場を訪れたが、いつものように外野席に座り、選手一人一人の応援歌を熱唱していたところ、贔屓球団のとある選手が放ったホームランボールが、男性のすぐ足元に落ちてきたのだ。
「打ったボールが一直線で向かってきて、怖かったですが興奮しましたね。本当に足元に落ちてきたので、すぐ拾って”やった!”って。でもすぐ、これはヤバイとも思いました」(都内在住の会社員)
男性はボールを拾い上げ、反射的に「やった」と叫んだが、すぐに我を取り戻し、周囲に子供がいないか見回した。そして、少し離れたところからこちらの様子を伺っていた、小学校低学年くらいの少年を呼び寄せ、ボールを差し出したのだ。
「だって、SNSで晒されたらマジでやばいんで(笑)。別に子供から取り上げてはないけど、どんなふうに切り取られるかもわからないし、とりあえず子供にあげとけば炎上はしないだろうって、同行した友達とも以前に話していたことがあるんです」(都内在住の会社員)
恣意的な「キリトリ」動画が拡散
最近もアメリカ・大リーグの試合中継で、ホームランボールを拾い上げた親子から、中年女性がボールを奪っているように見えるシーンが放送され、SNSで世界中に拡散された。真偽不明な女性のプライバシー情報とされるものが暴かれ、女性の写真や映像を使ったミームも大量発生している。球場で足もとにホームランボールが転がってきた会社員も、こうした事実を把握していたという。