自民党総裁選のインターネット討論会に出席する小泉進次郎農林水産相(右)。左は高市早苗前経済安全保障担当相=9月30日、東京・永田町の同党本部(時事通信フォト)
失言や失敗が出現したら即、炎上して転落、というコースがお決まりのようになっているが、2025年の自民党総裁選では、少しの炎上はあっても長続きしないようだ。小泉進次郎農林水産相の陣営の「ステマ問題」が、第一報のときに予想されたほど大きな広がりを見せていない現状について、臨床心理士の岡村美奈さんが分析する。
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陣営のステマ問題で”逆風だ””1年前と同じ””総裁選が混迷する?”といった記事がネットに踊っている小泉進次郎農林水産相。支援者からは落胆と怒りの声が出ているというが、小泉陣営の勢いが失速するほどのダメージは出ていない。
週末には高市早苗・前経済安全保障担当相が逆転したという情報が流れたが、29日に公開された読売新聞社が自民党総裁選を巡り行った最新の自民党支持層における調査によると、支持する候補者の1位は小泉進次郎農水相40%、2位が高市早苗・前経済安全保障担当相が25%。以前と変わりない。日本経済新聞社とテレビ東京が行った世論調査でも、自民党支持層に限るが首位が小泉氏33%、次が高市氏28%。FNN(フジテレビ)の国会議員動向調査では、議員票でも小泉氏がトップで、林芳正官房長官が続く。問題が起きても小泉氏リードは変わらない。それはなぜか。ポイントが2つある。
1つは「ステルスマーケティング」いわゆるステマを要請したのが。小泉陣営の総務広報班長を務めていたとはいえ元デジタル相で、自民党の現ネットメディア局長の牧島かれん氏だったこと。「去年より渋みが増したか」「ビジネスエセ保守に負けるな」など配信動画へのコメント例まで並べて小泉氏を称賛するコメントを書き込むよう、支援者に要請していたのだ。要請したのが小泉氏自身でも彼の秘書でも、事務所スタッフでもなく、元デジタル相の牧島氏だったことが大きい。自民党のデジタル環境、ネット問題の旗振り役を務めてきた、いや今も関わっている人物がやらかしたのだから、ネットに関する自民党の意識、認識、自民党議員が持つ感覚はこの程度だったということだ。
牧島氏は総務広報班長を辞任。小泉氏は知らなかったとはいえ自分の責任だと全面的に謝罪した。ここで問題を形作っていたフレームが小泉氏から自民党へ変化する。物事の捉え方、フレームワークが変われば問題の根源は旧態依然とした自民党体質へと向かう。問題視するのは自民党にとってプラスにはならないし、今回は投票するのはその自民党の国会議員と党員、党友だ。この問題だけで支持が傾くことはないだろう。