“外国人シカ暴行発言”が波紋を呼んでいる──(時事通信フォト)
投開票日を目前に控える自民党総裁選。最有力候補のひとりとされる高市早苗氏の発言が物議を呼んだ。9月22日に開かれた演説会のスピーチの冒頭、高市氏は「万葉集」に収められた牡鹿に関する和歌を読み上げた後に、こう続けた。
「奈良のシカを足で蹴り上げるとんでもない人がいる。殴って怖がらせる人がいる。外国から観光に来て、日本人が大切にしているものをわざと痛めつけようとする人がいるとすれば、何かが行き過ぎている」
SNSでは〈保守姿勢というか、普通の日本人なら持っている気持ちじゃないの?〉と高市氏に賛同する意見が上がる一方、〈一部の例外だけ取り上げて、針小棒大に語っている〉など排外主義を煽るのではないかといった批判も相次いだ。発言から2日後、記者クラブの総裁選共同会見で高市氏はこの話題について聞かれた。全国紙政治部記者が話す。
「記者に『(発言の)根拠はあったのか』と問われた高市氏は、『こうしたものが流布されているということによる私たちの不安感、そして怒り、というものがある。これはたしかだ』と述べるに留めた。経緯は『自分なりに調べた』とし、これといった根拠は示せませんでした。
具体的には昨年7月にSNSで広まった動画(現在は削除)を指しているとみられますが、各社、管轄の県庁部署に確認したところ、行為者が何者であるかは特定されておらず国籍も不明。高市氏側から、担当部署への問い合わせなども特になかったようです」
あいまいな論拠を示す高市氏に対し、マスコミ各社は裏取り取材に奔走。9月29日放送の「news every.」(日本テレビ系)で、奈良公園で10年ガイドを務める女性が「攻撃的な観光客はあまり見かけない」と語ったところ、SNSで〈(日テレは)ヤラセだろ〉〈奈良公園にこんなガイドいない〉と真偽不明な批判が相次ぐ騒ぎにもなった。
結局、奈良のシカ事情の真実とは──。
NEWSポストセブンは、江戸時代に創業され100年以上の歴史をもつ旅館に取材をした。旅館の女将が話す。