首相指名選挙で自民分裂バトル
遠藤氏は翌日、自民党の森山裕・幹事長と坂本哲志・国対委員長の2人と会談して国会日程について意見を交わすと、小泉選対副本部長だった齋藤健・前経産相を訪ねている。自民党と維新の交渉で、総裁選後に連立交渉の時間が必要なため、首相指名の臨時国会は10月中旬以降に遅らせる方針が決まった。
そうした交渉の後、維新は9月30日に「副首都」構想に関するプロジェクトチームの会合を開いて国会に提出する関連法案の「骨子素案」をまとめると、吉村代表は、「(連立交渉で)自民党新総裁にぶつける」と言ってのけた。別の維新関係者が言う。
「この時点で連立交渉相手として林芳正氏も想定されていた。林氏は総裁選に先立って維新の馬場伸行・前代表と会食し、告示後に藤田文武・共同代表と動画で対談した後には『憲法や安全保障、社会保障の議論で一致するところが多い』と猛アピール。副首都構想にも前向きに発言した。維新は総裁選中から小泉・林、どちらでも連立交渉を進められる状況が作れた」
だが、維新が連立条件に掲げる大阪副首都構想は自民党内の大きな火種になりかねない。
維新は大阪府と大阪市を統合して東京23区のような特別区に再編し、大阪府を「大阪都」にする構想を過去2回、住民投票にかけたものの、自民党など各党が反対して否決された経緯がある。
実は、今回の維新案では副首都計画は「大阪都」(特別区)設置とセットになっており、副首都は首相が指定し、「都」を名乗れるとされている。
新総裁が維新を連立に組み入れるために副首都計画を受け入れれば、これまで「大阪都構想」に反対してきた自民党大阪府連の猛反発は確実だ。
さらに連立の大きな障害が公明党だ。
公明党は昨年の総選挙では大阪の4選挙区で維新に全敗。選挙で全面対決した維新の連立入りに強い難色を示している。
連立交渉の舞台裏を知る自民党国対関係者は、「以前は維新と公明が選挙協力したことがある。両党と関係が良い菅さんが仲介し、次の総選挙で維新が大阪の選挙区を1つか2つ公明に渡してくれないかという条件で両党と調整している」というが、“犬猿の仲”となった維新と公明が簡単に合意できるとは考えにくい。
数の上では、自公維3党連立ができれば衆参とも過半数を確保できて政権が安定するように見えるが、簡単にはいかない。
小泉陣営が維新との連立交渉を進めるほど、自公間や自民党内に大きな亀裂が生じていったからである。
(第2回に続く)
※週刊ポスト2025年10月17・24日号