川崎市と東急グループがタッグを組んで実現した返礼品「運転シミュレーター体験」の様子
ふるさと納税で寄付先を探す場合、全国各地の自治体のふるさと納税情報がまとめられたポータルサイトを利用することが多いだろう。専門サイトから申し込むか、よく利用するECサイトのふるさと納税部門を使うか、など様々な選択肢がある。そのなかに、鉄道事業者が自治体と協力して返礼品を用意した、ふるさと納税が存在する。ライターの小川裕夫氏が、JR東日本や東急電鉄がふるさと納税をポータルサイトで扱うことで見据える未来についてレポートする。
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2008年5月から始まったふるさと納税は、豪華な返礼品で注目を集めたり、過剰な返礼が問題となってニュースになったりと、その時代ごとに様々な関心を集めてきた。最近では、2025年10月にふるさと納税によるポイント付与が禁止となったことが話題だ。数あるふるさと納税サイトのなかでも、寄付金額に応じて高くなる還元率のポイントでほかとの差別化を図っていた楽天グループは、ポイント付与の禁止という総務省の措置に対して猛反発している。
ポイント還元率という目安が消滅した10月1日以降、ふるさと納税を利用するときのポータルサイト選びには、これまでとは少し違う指標が着目される可能性がある。そのひとつとして、そのポータルサイト独自の返礼品が、改めて評価されるのではないか。
ふるさと納税というと、各自治体が互いの税収を奪い合うバトルロワイヤルのフィールドのようになっており、その地域の特産品を中心とした魅力的な返礼品が話題になることが多い。地方都市は和牛やウニ・イクラといった地元産品を用意し、滅多に食べられない高級食材などに寄付者も目が行きがちだ。だが、徐々にモノだけではなくコト、その地域ならではのユニークな体験が返礼品として注目を集めるようになった。
JR東日本はECサイト「JRE MALL」を通じて2020年10月から各自治体のふるさと納税事業の取り扱いを始めた。そのなかに、JR東日本社員が発案したという駅長体験や車両センター体験、ポイント転換&入換車両乗車体験といった鉄道とコトを組み合わせたものが返礼品となるメニューが登場した。鉄道事業者によるふるさと納税ポータルサイトだからこそ準備できた体験型返礼品といえるだろう。
鉄道を生かした東急限定ふるさと納税
ふるさと納税で攻勢を強めるJR東日本に対して、東京都と神奈川県で覇権を争う東急電鉄も負けていない。東急は「東急ふるさとパレット」というポータルサイトを立ち上げてふるさと納税事業に参入しているが、そのスタートはJR東日本よりも早い2019年10月だ。