休館が続く瀬美温泉
笹崎さんが最後まで想っていたのは「家族」
──16日午前、露天風呂の清掃中にクマ被害にあったようですが、いつも同じような時間で掃除をしているんでしょうか?
「お客さんの入り具合やチェックアウトの状況によって掃除の時間も変わるので一概には言えませんが、あの日は午前9時30分くらいだったかな、もともと予定にあったというか、“この時間に作業できる”とか“汚れている”とか思ったから、清掃に行ったんじゃないでしょうか。しばらく経っても帰ってこないから探しに行きました」
──差支えのない範囲で、現在、遺されたご家族の状況は?
「当然ですが、穏やかじゃないですよ。ただ言えるのは、奥さんは憔悴しきっていたのは確かですね」
──プロレスのレフェリーをやっていて、身体も大きかったようですが?
「私(170センチくらいで恰幅も良い体形)よりも大きかったですからね」
──笹崎さんは、どんな人柄でしたか?
「この春、家族で住み込みで来ました。寡黙に仕事をこなし、嫌なところは全くない。こちらも頼りにしていた従業員です。(お子さんのことを話すなどは)自分からしゃべるというよりは、聞けば話すという感じですね」
──仕事ぶりは?
「真面目ですよ。唯一休みを取ったのは、子供の行事のときだけです。まめに子供の行事などに出ていましたよ。飲みに行ったりもしてなかったんじゃないかなぁ。そのくらい家族思いでしたので」
──現在は休館中のようですが?
「安全対策ができるまでは休館中です。いつまでかは未定ですね。家族のことを思ってここに来た笹崎のためにも、なんとか再開したいなという思いはあります。
そういえば、警察が検視に来て、(笹崎さんの)身分を証明する所持品を並べて本人確認をしようとしたんですが、その遺品の中に、お子さんの給食費を振り込んだ領収書があったんですよ。それを見たときにお子さん思いの姿を思い浮かべて、さまざまな思いがあふれてきました」
寡黙な性格の笹崎さんは、SNSも頻繁に更新するタイプではなかったようだ。しかし試合の告知の間に投稿しているのは、子供たちのことばかりだ。
〈娘に誇れるよう、お仕事頑張りますよ〉〈何より元気に育ってくれて、ありがとう〉
クマの凶爪に倒れ、最期に頭に浮かんだのは、ともにリングでの時間を過ごした仲間たち、そして最愛の家族のことだったのか──。ご冥福をお祈りします。
(後編了。前編を読む)
