年末の税制改正の時期にかけて、国会議員会館には税制優遇措置の延長や新設を求める各業界の代表が押し寄せ、自民党議員の事務所を回って陳情を重ねる光景は永田町の“風物詩”だ。自民党はそうした陳情を翌年度の税制改正に反映させることで、業界から献金や選挙支援を得てきた。
租特や補助金は財務省の権益というだけでなく、自民党にとっても大きな政治利権なのだ。
もし、高市首相が維新とともに官邸主導で廃止していけば、自民党の支持基盤を潰すことになる。自民党や財界、霞が関を挙げての激しい反発が起き、政権基盤が危うくなる可能性さえある。
財務省はむしろそうなれば好機と見ている。
「財務省は税制優遇を縮小すれば税収が増えるし、本音ではコロナ対策名目で肥大化した各省の補助金も減らしたいが、これまでは自民党が反対するからできなかった。租特や補助金を大幅に削減すれば財務省より自民党のほうが多くの血を流すことになる。それを覚悟のうえで官邸がやってくれるというなら大歓迎だ。自民党や業界の恨みは財務省ではなく、高市総理と維新に向かう」(財務省OB)
財務省へ積極財政の見解を求めたところ「日本の財政の国際的信認が失われることのないように、経済と財政の健全化の両立を図ってまいりたい」との回答だった。
高市氏が租特や高額補助金の廃止に踏み込んできたら、財務省は逆に自民党議員たちに「業界への税制優遇や補助金を削って選挙基盤を失うか、それとも高市首相のクビを差し出すか」と迫るつもりなのだ。
そうした抵抗をはねのけて、掲げてきた減税や積極財政を実現させるのか、早期退陣に追い込まれるのか。新政権は早くも重大局面を迎えている。
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※週刊ポスト2025年11月7・14日号