生前、舞台終演後に帰宅する八千草さん(2018年8月)
「ご自宅の庭には生き物が暮らすエリアがありました。特注で作られた4メートル四方の池には、近所で捕まえたカエルやメダカなどが泳いでいたそうです。昆虫や野鳥なども飛来し、四季を感じながら庭の光景を眺めるのが彼女の日課でした」
八千草さんはこの庭に深い思い入れがあった。かつて彼女は周囲の反対を押し切って映画監督・谷口千吉氏(享年95)と結婚した。子どもには恵まれなかったが、2人で趣味の山歩きに出掛けるなど、“おしどり夫婦”と呼ばれていた。
「2007年に谷口氏が亡くなるまでの半世紀を妻として添い遂げ、夫の死後は愛犬と自宅で暮らしていました。八千草さんは2018年に膵臓がんを患い、大手術を受けました。術後、周囲は介護施設への入居を勧めましたが、彼女は『夫と過ごしたこの家で愛犬と一緒にいたい』と、在宅介護を選びました」(同前)
親しい知人が打ち明ける。
「八千草さんは2019年2月に病状を公表しました。医者からは『(余命は)あと数年』というお話をされていたので、2021年くらいまでに仕事を調整して、ご本人はその過程で身の回りの整理も考えていました」
そんな八千草さんは生前、最愛の夫との思い出の庭を遺すよう奔走していたが、様々な問題が立ちはだかっていた……。
後編では自宅の存続に生じた様々な問題、遺贈した相手など、我が子のように可愛がっていた愛犬の行方を報じていいる。
