生前、舞台終演後に帰宅する八千草さん(2018年8月)
「相続税が2500万円という報道もありましたが、実際はそれ以上。自分の力ではどうにもならなくなってしまい、無念ですが手放すしかありませんでした」
自宅を売却しないかぎり、数千万円の相続税の支払いが課される。さらに法定相続人ではない人が遺贈を受ける場合、通常の相続よりも2割加算された額を相続税として支払う必要があり、大きな負担に。
そのため、3人は不動産販売業者への売却を決意し、現金化することを選んだのだ。そして、八千草さんの自宅は2020年9月に売却され、相続税を支払った残りの現金を3等分することに。
「八千草の自宅があった場所に、今は新しい家が建っているそうですね。私も昔はあの辺によく行っていて思い出がたくさんあります。でも、どうしても辛くて……行けていないんです」
八千草さんの逝去から6年、自宅の跡地に当時の面影は残っていない。彼女は亡くなる1カ月前に入院中の病室から「ヴェルディ」に会うために3日ほど帰宅していた。夫との思い出の場所で、愛犬と過ごした時間は彼女にとって大切な“人生の終活”だった。
その愛犬は今、どうしているのだろうか。
「亡くなる直前までご自身で世話をされていました。今は別の方が札幌でお世話をしていますし、元気に走り回っているようですよ。12~13歳くらいだと思います」
庭園を遺すことは叶わなかったが、八千草さんの愛犬は自然豊かな北の大地で主のことを思い出しているに違いない──。
(了。前編を読む)
