民家に侵入するツキノワグマ(時事通信フォト/兵庫県警浜坂署提供)
クマとの共生課題「駆除しない手段もとってほしい」
駆除というと、自治体がやむを得ず凶暴なクマを射殺した場合、ほとんど毎回ネット上で賛否が分かれる問題だ。“賛成派”の中には〈人を殺したクマを駆除するのは当然〉といった意見から、〈山のクマを殺しまくって、一掃すればいい〉といった過激なものまである。
対して、“共生”を訴える人や団体も散見される。一般財団法人「日本熊森協会」は11月7日までに公式Facebookを更新。環境省と農水省に対して、「クマ出没問題に関する要望書」を提出し、〈捕殺で数を減らすことに偏った対策から脱却し、人とクマの生活圏をすみ分ける政策と予算化を求める〉旨の陳情をしたと報告している。
では坪田氏はこうした賛否についてどう考えるか。人間とクマの“共生社会”について、専門家としての見解も交えこう述べた。
「熊というのは進化の中で、採食に傾いた雑食性になってきた。ですから人間への被害の根底にあるのは、餌の問題が非常に大きいのですよ。餌を山の中できちんと獲れるような環境作りをしていくと言うのがまずひとつです。
そうは言っても、餌となる植物には自然のサイクルがあって、実りの良い年と悪い年がありますから、どうしても人里に出没する年があるわけです。問題はそういう時にいかに人間側が管理するか」
具体的にはどう対応すればいいのか。
「たとえばベアドック(猟犬)や、あるいはゴム弾や花火弾という熊を殺さないで済むような手段で威嚇をしたり追い払ったりする。そういう非殺傷性の方法をとりながら、駆除しなくて済むような対策もしてほしいなと思います。
対策は各自治体で指揮をとってもらうのがいいでしょう。最近の秋田県や岩手県のように自治体レベルでは難しい場合には、具体策を出せる専門家を環境省や都道府県レベルの機関から、市町村など各地域に配属してもらい、その人を中心にクマ対応をしていくというのが理想的ですね。そうした組織作りを行政は目指していただきたい」
同氏は現在も鋭意、冬眠メカニズムなどを中心にクマの研究を重ねているという。果たして坪田氏が語るような共存社会は今後、実現するのだろうか。
(了)
