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《“両手ポケット”に日本が頭を下げる?》中国外務省局長の“優位強調”写真が拡散 プロパガンダの狙いと日本が“情報戦”でダメージを受けないために現場でやるべきだったことを臨床心理士が分析

左が金井正彰・外務省アジア大洋州局長、右が劉勁松・中国外務省アジア局長。劉氏はポケットに両手を入れたまま(AFP=時事)

左が金井正彰・外務省アジア大洋州局長、右が劉勁松・中国外務省アジア局長。劉氏はポケットに両手を入れたまま(AFP=時事)

 キリトリ画像や映像は、事実と違う印象を与えることができるということを、多くの人がSNSで何度も体験していることだろう。そのキリトリが日中外交の場面で行われた。臨床心理士の岡村美奈さんが、中国国営テレビが日中局長協議の終了直後に撮影した映像と、そこから切り取られた画像はどんな効果を狙ったものなのか分析した。

 * * *
 1枚の写真の印象が人々に与える影響は大きい。2024年7月13日、ペンシルベニア州で演説中に銃撃されたトランプ大統領が、顔から血を流しながら群衆にむかって拳を突き上げる写真は”奇跡の1枚”と呼ばれ、米大統領選挙の流れを変えたと言われる。どのタイミングでどんな仕草をすれば印象的で効果的か、トランプ氏はよく知っている。各国首脳との初会談の時、優位に立つためにトランプ氏が握手をその手段として使うのは有名だ。外交の場ならその影響はさらに大きくなるからだ。

 仕草やボディランゲージが戦略的に使われれば、どれだけ印象操作に効果があるのか、使われた方はダメージを負うのか。11月18日、中国メディアによって意図的に公開された映像や写真がそれを物語る。公開されたのは日中外務省の局長協議を終え、建物から出てきた時の外務省の金井正彰アジア大洋州局長と中国外務省の劉勁松アジア局長の映像や写真だ。

 両幹部の仕草や表情は、日本側が中国側に叱られているようにも、日本が中国に謝っているようにも見え、日本と中国の立場を誤解させやすいものだった。建物から先に出てきた時点で劉氏は胸を反らして、両手をポケットに突っ込んでいた。金井氏と言葉を交わすと、カメラの方に身体を向けて立ち止まる。ポケットに手を入れる仕草は本心を隠したい時、警戒している時や自信がない時に出やすいといわれるが、劉氏の表情は硬いものだが眉間を寄せたり奥歯を噛みしめるような険しさや不安、警戒の色は見せていない。

 この仕草は他に落ち着いているよう見せたい、相手より優位に立っていると思わせたい時などにも出やすいといわれる。外交上は非礼といわれるような仕草であり、通常なら海外の要人相手に見せるような仕草ではない。それでもこの仕草を見せたのは、中国側は怒っている、日本に対してこれぐらいのことはやっても構わないという姿勢を誇示したかったからという見方が大半だ。劉氏は「寒し、握手するのも不便だった」と仕草の理由を話したというが、不遜で高圧的に見せる効果を狙ったものであり、おそらくカメラがそこにあることを知っていたのだろう。

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