岩屋氏は問題の”落としどころ”についてどう考えるのか
「土葬は必ずしも禁止ではない。だから…」
──日出町、杵築市はどちらも岩屋さんの選挙区ですね。これまでにどんな経緯があったのですか。
「誤解してほしくないのは、今回の要望はイスラム教や外国人の排斥運動ではないこと。むしろその逆です。
私の選挙区の別府市には創立25周年を迎える立命館アジア太平洋大学(APU)があり、教職員と学生の半数は外国人です。教職員の中には日本の永住権取得者も増えていて、国内で死去した場合の埋葬問題はかねてから浮上していた。そして別府イスラム協会の代表はAPUの教授で、永住権を取って日本に帰化しています。彼はこの問題を長年憂慮していました。
イスラム教徒にとって火葬は極めて深刻な問題なので、彼らは以前から日出町に土葬墓地をつくらせてほしいと申請していました。しかし、現在の町長さんが『町有地を売却しない』という方針を固めたので、墓地建設計画は頓挫した状態です」
──岩屋さんはこの問題をいつ把握したのですか。
「数年前ですね。日出町や杵築市の議員さん、県議さんたちから『この問題を自治体だけで決めろというのは勘弁してほしい、国がもっと関与してほしい』という陳情がありました。
というのは、地元住民の間にもいろいろな意見がある。イスラムの人たちとも共生していかねばという思いはあるものの、実際に土葬墓地ができるとなると『水質汚染が起きるかも』『風評被害を受けるかも』という心配や、『土葬墓地はとにかく嫌だ』という否定的な意見が出てきて、決着がつかないのですね」
──現在の規定では「土葬墓地をつくる、つくらない」という決定は、地方自治体の長に委ねられています。
「現行の墓埋法(正式名称は『墓地、埋葬等に関する法律』)では、土葬は必ずしも禁止されておらず、国内の一部地域では今も土葬の風習が残っています。だから、土葬の是非は各自治体の判断に委ねられている。法律として明確に“土葬禁止”となっていれば話は違いますが、そうじゃないのでこういう問題が発生するのですね」
自治体では対応に”限界”があると話す岩屋氏。要望書の提出を受けて自民党内でも意見が割れているといい、解決の目処は立っていない。
他方、土葬墓地が不足していることから、違法に「闇土葬」をする在日イスラム教徒も問題視されている。先日も土葬が認可されている「本庄児玉聖地霊園」に、管理者に無断で14体もの遺体が埋葬されていることが明らかになった。現状、こうした「闇土葬」はそれほど多くないものの、土葬に対して嫌悪感を示す日本人が徐々に増えているのもたしかだ。
そんな中で岩屋氏は問題の”落としどころ”についてどう考えるのか。続く記事では、土葬問題に関する具体案や、”多文化共生”の必要性についても語っている。
取材・文/前島環夏
【プロフィール】前島環夏(まえじま・わかな)/ライター・エディター。Web媒体を中心にインタビューや書籍編集などを行なっている。
