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震災復興は日本経済が袋小路から抜け出すきっかけになるか

 今回の震災の影響はどうか。生産能力に余剰を抱える経済状況は阪神大震災当時と同じである。「バンクオブアメリカ・メリルリンチのアナリストレポート」はこう予測する。

 被害の大きかった宮城と福島の生産活動は日本全体の3.1%。岩手、茨城、栃木を含めるとGDPの7.8%を占める。

 生産活動の低下が阪神大震災と同程度と仮定すると、日本のGDPに与える影響はマイナス0.2~0.3%になる。ただし、復興需要はGDPの1%か、それ以上になるとみられ、日本の経済成長が地震によって妨げられるとはいえないと結論づけているのである。

 バークレイズ・キャピタル証券のチーフエコノミスト、森田京平氏は、今回の被災地と阪神大震災の被災地の類似性に着目する。

「今回の被害が甚大だった岩手県、宮城県、福島県、茨城県の産業構造を兵庫県と比較すると、例えば製造業の割合が24.7%と24.6%、卸売・小売業が10%と11.3%、サービス業が20.4%と21.5%など、よく似ています。当時は、震災後に2度にわたって大規模な経済対策予算を組んで景気を支えた。今回もそのような政府の後押しがあれば、兵庫と同じように早期の経済復興が可能になると考えます」

 経済評論家の三橋貴明氏も、「これで日本は終わりだ、などという声もありますが、全く的外れです」と、今後に期待を失わない。 

 日本経済が低空飛行を続けてきた背景の一つとして、よく指摘されるのが「将来不安から、ストック(預貯金)は増えているのに、それを使おうとしない」という現象だ。支出を余儀なくされる被災者には、負担を国民全体で広く薄く引き受ける仕組みが必要になってくるが、少なくともこれまでの「カネはあるが使わない」という袋小路から抜け出すきっかけにはなる。

 このような災害が起きると、国民全体に自粛ムードが広がって経済活動が低調になることも知られている。究極的には、それは被災者のためにはならない。こんな時こそ経済活動を活発化させ、日本全体を成長させることで、復興の力を強めていきたい。

※週刊ポスト2011年4月1日号

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