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被災地派遣の全国のガスマン その熱さから現場で意見ぶつかる

 被災地で最も早い復旧が急がれるのが、電気、ガス、水道などのインフラだ。

 仙台市では、約31万戸のガス供給停止という緊急事態に、全国のガス事業者から約3700人のガスマンが派遣され、1か月かけて復旧作業をほぼ完了した。

 だが、石巻市(石巻ガス)は例外だ。4月28日現在も全国から送り込まれた「復旧隊」が、ガスを復旧させるべく奮闘しているが、津波の被害が甚大で、復旧作業も難航しているのだ。

 この復旧隊は大阪ガス(協力会社含む)が約190人、東部ガスが約130人、京葉ガスが約30人、日本ガス協会が4人(人数はいずれも最大時)という混成部隊だ。隊長を務めるのは大阪ガスの菅博文氏だ。

 菅氏は、混成部隊での長い作業になるため、意思統一は非常に重要だと語る。

「異なる事業者が集まって作業しているので、朝礼の時などに、目的をはっきりさせるようにしています。自分たちがなぜ今ここにいるのか、なぜ我々がここで作業に当たっているのか、それをしっかりと伝え、認識させることからスタートするのです」

 誰もが強い使命感で仕事に当たっている。それもあって熱くなった現場では、時に意見のぶつかり合いも生じる。

「そのやり方はおかしいんじゃないですか?」

 ある現場では、班長が中隊長の方針に異を唱えたこともあった。ガス管の水抜きの作業で、手順を巡っての意見の対立だった。中隊長、班長双方とも、一番効率的にできる方法を一生懸命考えた結果だったが、班長の思いを理解した上で、菅隊長はこう指示した。班長は中隊長に従うべし。

「災害の現場では、組織として動くこと、指揮命令系統の堅持が一番大事です。それが失われれば、復旧は遅れてしまいます」

 班長も納得して、いつも通り、目前の復旧作業に邁進した。問題はコミュニケーションだけではない。長期の復旧作業でストレスが大敵となる。

「生活圏を離れて派遣されていますので、長期になればなるほど、どうしても隊員はストレスが溜まります。そうならないように、モチベーションを保ち続けなければならないのです。

 そこで、私自身が現場に足を運び、各隊員の働きを直接見て、労をねぎらい、誉めるべきところは誉めます。隊員に仕事の意義やこれまでの積み重ねを常に意識してもらうことが、モチベーションを高く維持することにつながるものと考えています」
 
 また、復旧隊は第一から第三までの小隊に分かれるが、小隊ごとの報告がなされるため、お互いの進捗状況がよき刺激となり、発奮材料となっている。

 そしてもうひとつ。

「大事なことは、カラ元気でもいいので、隊長自身が元気であること」――隊長のその声には力が漲っていた。

※SAPIO2011年5月25日号

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