国際情報

ウィキリークスは国家システム破壊目的の政治運動と佐藤優氏

 朝日新聞が5月4日付朝刊でウィキリークス(WL)から入手した約7000本の米国国務省公電をもとに、その内容と分析についての特集を発表した。この瞬間からWLは日本の外交を根底から揺るがす政治問題になった。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が解説する。

 * * *
 WLを企業や官庁の内部告発者と同一視すると大きな過ちを犯す。WLは既存の国家システムを破壊するという明確な目的をもった政治運動だ。
 
 ある会合で同席した警察庁幹部(警視監)が「佐藤さんのWLに関する論考を興味深く読みました。私も佐藤さんと同じ認識でWLはとても危険だと思っています。WLは情報を用いた一種のテロリズムだと思うのです」と述べていた。
 
 この警察庁幹部の認識は正しい。WLの政治目的に筆者は与しない。しかし、だからといってWLが不正な手段で入手し、公開した情報を無視すればいいということではない。
 
 情報は、それが表に出れば、入手経路にかかわらず独り歩きする。真実であれば、その情報は世の中の現実に影響を与える。政府が「WLの情報を無視しろ」と訴えても、それは逆効果になるだけだ。

 朝日新聞が5月4日付朝刊でWLから入手した約7000本の米国国務省公電をもとに、その内容と分析についての特集を発表した。この瞬間からWLは日本の外交を根底から揺るがす政治問題になった。新聞記者には他紙のスクープ記事の後追いはしたくないという心理が刷り込まれている。

 従って朝日新聞の読者以外にはWL問題が日本の国益に与える影響が十分に認識されていない。しかし、注意深く観察すると、深刻な事態が進捗していることがわかる。

 5月4日付第一弾の特集では普天間問題が中心になった。沖縄タイムスは、朝日新聞の記事をすべて転載した。こんな事例は新聞業界で異例のことだ。琉球新報は、WLが公開した米国国務省の秘密公電を独自に分析して、朝日新聞が報道しなかった以下のような重要な情報を発掘している。

〈普天間関連米公電 米に不満表明促す 外務官僚暗躍 新たに判明

 内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した米公電で、米軍普天間飛行場の返還・移設問題をめぐり、交渉相手の米政府と内通し日本の閣僚への影響力を行使させようとする外務官僚の姿が6日、新たに照らし出された。

 外務官僚が閣僚に対し、在沖海兵隊のグアム移転と普天間飛行場代替施設建設を切り離せないとさとしたり、外務省の「前担当者」が当時の鳩山政権の普天間問題に対する取り組みを批判し、米政府に対して公式に不満を表明するよう促していたことが分かった。
 
 /2009年10月5日作成の在沖米総領事館発の公電は、外務省日米安全保障条約課長の船越健裕氏が、岡田克也外相(当時)とやり取りした発言を紹介。船越氏が「岡田氏は、米国が普天間代替と、海兵隊のグアム移転を切り離すことを受け入れられないとする官僚らの主張を認めなかった」などと話したという。
 
 船越氏は「普天間代替なしに、議会がグアムに予算を認めることなどあり得ないと、岡田氏に伝えた。しかし彼(岡田氏)は米国から直接それを言わなければ信じなかった」と述べたという。
 
 /2009年12月16日作成の在東京大使館から米国務省など宛ての電文は、外務省の「前担当者」らが東京に招集され、うち3人が同月10日に駐日米大使館の職員と面談した内容を報告。
 
 /「前担当者らは、鳩山政権の普天間代替施設問題への取り組みを強く批判しており、米政府に公式に不満を表明するよう促した」としている。この3人について「さまざまな表現で普天間代替施設計画への鳩山政権の扱い方や政治性について、不満を表した。
 
 米政府が普天間代替計画において、日本政府に全面的に合わせるべきではないし、合意済みのロードマップで譲歩するのも避けるべきだということだ」と伝えている。(内間健友)〉(5月7日琉球新報電子版)

 特に船越健裕氏は、現在も普天間問題に関する鍵を握る外務省北米局日米安全保障条約課長の地位にいる。この報道によって船越氏は沖縄県民の信頼を失った。

※SAPIO2011年6月15日号

トピックス

二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン