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ダライ・ラマ 「存命中の後継者指名は可能である」と明言

国内外で圧力を強めている中国。中でも国内で厳しい弾圧を受けている民族のひとつがチベット族だ。チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世(76歳)は8月5日、インド北西部ヒマチャルプラデシュ州ダラムサラで、単独インタビューに応じた。聞き手は、ジャーナリストの相馬勝氏だ。

* * *
――ご自身の後継者問題については、9月に開かれる高僧会議で協議するということですね。

ダライ・ラマ:後継者問題については、私はすでに1969年当時から公式に説明している通り、私の晩年に、まず(輪廻転生の)ダライ・ラマ制度を存続させるかどうかを諮ります。

これにはチベット人のほか、ヒマラヤ山脈周辺の人々やモンゴル人も非常に関心を持っています。「ダライ」はモンゴル語で、モンゴル人とダライ・ラマは伝統的に強い関係があります。これらのダライ・ラマ制度に関心を持つ人々に諮った結果、制度が存続することになれば、次に後継者問題です。

後継者問題については伝統的な(没後、生まれ変わりを探す)方法と、それとは違う新しい方法が考えられます。当面は今後10年、15年、20年と様子を見て、見極めていくことになります。

ただ、私の後継者問題、つまり輪廻転生は極めて精神的なもので、私の後継者がどこで生まれるのかも“私の問題”です。私に後継者を選ぶ権利がある。私以外のだれにもこの権利はない。もちろん中国共産党にもです。

第一、彼らは宗教を信じないのだから、輪廻転生も信じないだろう。もし、彼らが宗教を受け入れ、生まれ変わりも信じるのなら、論理的には、毛沢東や鄧小平の生まれ変わりを探すべきだ。私の生まれ変わりを彼らが探すのはナンセンスでしょう(笑)。

――あなたが存命中に後継者を決める可能性もあるのですか?

ダライ・ラマ:それは可能です。これには前例がある。ダライ・ラマ6世と7世です。6世が当時の清王朝に呼ばれて中国に行く途中、出奔し、現在のモンゴルに落ち着き、そこで第7世となる男の子と会った。

6世はこの子を生まれ変わりと認定し、第7世とした。このように、現役のダライ・ラマが後継者と会った例は複数あります。私が最晩年の時に直接、若き後継者を探し出すことは潜在的にも可能なのです。しかし、大多数の人々は伝統的な方法に従うことを望んでいます。

後継者問題については、これまでも数回話し合っており、9月の高僧会議で意見を聞きますが、それで最終決定を下すということではありません。

※SAPIO 2011年9月14日号

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