ライフ

ダイエットクッキーやラーメンで話題の“ミドリムシ”の正体

宇宙で活躍する可能性もあるミドリムシ

 最近『ユーグレナ』という耳慣れない健康成分が話題になっている。「ユーグレナなんて聞いたことがない」という人も、「ミドリムシ」なら、学生時代に理科の授業で一度は耳にしたことがあるだろう。『ユーグレナ』の和名が「ミドリムシ」なのだ。

 昨今、ダイエット中の食事代わりにする『ミドリムシクッキー』や、どんぶり1杯に6億匹ものミドリムシが入った『みどりラーメン』、ハンバーガーのバンズやドレッシングにミドリムシを含んだ『ミドリムシハンバーガー』等がネットニュースなどで話題となった。ほかにもカステラやアイスクリーム、みそ汁、佃煮など、さまざまなミドリムシ入り食品が登場。

 今、なぜミドリムシに注目が集まっているのか? そもそもミドリムシとは、どんな生き物なのか? 40年間にわたってユーグレナ研究を進めている大阪府立大学大学院の中野長久名誉教授に聞いてみた。

■地球上ただひとつにして“マルチ”な栄養食品

 中野先生によると、
「ユーグレナは、光合成によって自分で栄養素を作り出すことができ、自力で運動することもできる。つまり、動物でもあり植物でもある、地球上で唯一の微生物です。

 最新の機器を使った分析によって、ユーグレナの細胞を構成する成分には、動物的な成分と、植物的な成分のどちらもが含まれていることもわかっています。

 例えば、動物的な成分としては、ユーグレナに含まれる必須アミノ酸は、牛乳カゼインに匹敵するほど栄養価が高く、脂質のうち、必須脂肪酸、EPAとDHAが35%以上と、非常に高い割合を占めています。さらに植物的な成分としては、大量の食物繊維や、ビタミンも含まれています。これほど多彩かつ栄養価の高い成分をもっているユーグレナは、類まれな“マルチ栄養含有食品”といえます」

■便秘の緩和、血中コレステロールの低減効果を実証

 実際、ミドリムシを摂取することで、どんな効果が期待できるのか。

「まず、注目すべきは、食物繊維であるβ(ベータ)-1、3-グルカン。これらは、腸管でコレステロールや中性脂肪の吸収を抑えるはたらきがあることで知られています。このため、ヒトによる試験でも、血中コレステロールの低減作用や、便秘の緩和といった効果が認められました。

 また、動物実験では、血圧の上昇や脳卒中の発生を抑える効果、免疫機能を上げる効果も確認されています。私たちの研究でも、高血圧や脳卒中を発症しやすい性質のラットにユーグレナを投与したところ、これらの病気を発症せずに、ほぼ寿命をまっとうしたという事実を確認しました。

 30年ほど前、ユーグレナを魚の養殖用飼料として与えた結果、稚魚の成長が非常によくなったという経験があります。こういった成果に強く感動したことがきっかけで、私自身も、ヒトの生活習慣病低減に、ユーグレナがどれだけ効果を発揮できるかという点に興味をもち、研究を進めています」

■気軽にミドリムシ摂取可能なサプリも登場

 豊富な栄養をもち、健康効果も期待できるミドリムシ(ユーグレナ)をより積極的に摂取できるよう、新たなサプリメント『みどりむし59フコイダン』(90粒入り・7875円)も登場。ミドリムシに含まれる59の栄養素に加えて、フコイダンを配合している。

 フコイダンはミドリムシと同じ藻類に分類される海藻に含まれる成分で、抗腫瘍作用や免疫力強化などのはたらきがあるといわれている。生活習慣病やがん、インフルエンザなどの感染症――さまざまな脅威に対抗するために、“藻の力”が注目されているようだ。

■エネルギーや食糧問題、宇宙計画にもミドリムシ!?

 日本の食料自給率を回復させるためにも、ユーグレナを有効活用できるかもしれない、と中野先生はいう。

「前にも述べたように、ユーグレナは非常に豊富で、良質の栄養素がバランスよく含まれています。

 そのユーグレナを培養し、摂取することで、耕地の少ない日本では、食料自給率の回復を目指せますし、また、栄養失調で亡くなる世界中の子供たちを救える可能性さえあるのです。

 ユーグレナを空気のない環境におくと、バイオエネルギーとして利用できるワックスエステルを生成します。また、光合成をする生物でありながら、空気中よりも40%の炭酸ガス気化中でよく生育するという、非常にユニークな特徴ももっています。

 つまり、ユーグレナは、石油資源に代わる新しいエネルギー源となりえるということで、地球温暖化問題の有効な解決策にもなりますし、遠い将来ではありますが、月や火星での基地建設にも大いに貢献する可能性を秘めているのです」

 2011年8月30日に2050年ごろの火星有人探査の行程表が発表されたが、そんなタイミングで体長約0.1mmの微生物であるミドリムシが、宇宙で活躍する――なんてことがあるかも!?

関連記事

トピックス

山田和利・裕貴父子
山田裕貴の父、元中日・山田和利さんが死去 元同僚が明かす「息子のことを周囲に自慢して回らなかった理由」 口数が少なく「真面目で群れない人だった」の人物評
NEWSポストセブン
国内未承認の危険ドラッグ「エトミデート」が沖縄で蔓延している(時事通信フォト/TikTokより)
《沖縄で広がる“ゾンビタバコ”》「うつろな目、手足は痙攣し、奇声を上げ…」指定薬物「エトミデート」が若者に蔓延する深刻な実態「バイ(売買)の話が不良連中に回っていた」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
【美しい!と称賛】佳子さま “3着目のドットワンピ”に絶賛の声 モード誌スタイリストが解説「セブンティーズな着こなしで、万博と皇室の“歴史”を表現されたのでは」
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
騒動から2ヶ月が経ったが…(時事通信フォト)
《正直、ショックだよ》国分太一のコンプラ違反でTOKIO解散に長瀬智也が漏らしていたリアルな“本音”
NEWSポストセブン
ロシアで勾留中に死亡したウクライナ人フリージャーナリスト、ビクトリア・ロシチナさん(Facebook /時事通信フォト)
脳、眼球、咽頭が摘出、体重は20キロ台…“激しい拷問”受けたウクライナ人女性記者の葬儀を覆った“深い悲しみと怒り”「大行列ができ軍人が『ビクトリアに栄光あれ!』と…」
NEWSポストセブン
谷本容疑者(35)の地元を取材すると、ある暗い過去があることがわかった(共同通信)
「小学生時代は不登校気味」「1人でエアガンをバンバン撃っていた」“異常な思考”はいつ芽生えたのか…谷本将志容疑者の少年時代とは【神戸市・24歳女性刺殺】
NEWSポストセブン
大谷の「二刀流登板日」に私服で観戦した真美子さん(共同通信)
「私服姿の真美子さんが駆けつけて…」大谷翔平が妻を招いた「二刀流登板日」、インタビューに「今がキャリアの頂上」と語った“覚悟と焦燥”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚を発表した(左・Instagramより)
《お腹にそっと手を当てて》ひとり娘の趣里は区役所を訪れ…背中を押す水谷豊・伊藤蘭、育んできた3人家族の「絆」
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
《前科は懲役2年6か月執行猶予5年》「ストーカーだけでなく盗撮も…」「5回オートロックすり抜け」公判でも“相当悪質”と指摘された谷本将志容疑者の“首締め告白事件”の内幕
NEWSポストセブン
硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン