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「浪速の春団治」元阪神の川藤幸三 建設会社社長になっていた

「浪速の春団治」元阪神の川藤幸三インタビュー

「ワシが川藤や!」。代打一筋19年、生涯かけて打ったヒット数はイチローの1年分より少なく、本塁打数は清原の高卒1年目に負ける。しかし「浪速の春団治」といわれた野球に掛ける情熱、ファンへの心意気はメジャー級や! プロ野球シーズンのラストスパートに向けて、元阪神タイガースの川藤幸三さんの爆笑インタビューをお届けする。第1回は「川藤、社長になる!?」。(聞き手=神田憲行)

*  * *
――最近出された『代打人生論』(扶桑社新書)読んでびっくりしたんですが、建設会社の社長になられてたんですね。

川藤:もともとはワシの家内の親父が一代で築いてきた会社なんや。その親父が志半ばで亡くなって、その後を継いだんや。もちろん息子やからいうて簡単に跡継ぎなんかできるわけがない。でも働いてくれてはる従業員さんの生活を考えて、受けざるをえんようになった。しかしワシが受けたからといっていいようになるかといったら、そんな甘いもんやない。知らん世界の人間が社長やからといって周りの人間も認めてくれへん。なんとか潰さんように頑張っとるけれど、だけど継続していくほど難しいモノはないしね~。自分の知った世界の継続と違うからハンパなもんじゃない。

――野球評論家と二足のわらじを履いて、どんな社長業なんでしょうか。

川藤:いまだに自分のこと社長やなんて思てないですよ。こんなもんで社長いうたら世間の人に笑われてしまいますよ。だからなんとか受けた限りには、社長にならないといけないと思っているんです。経営者としての扉を開く一歩も二歩も手前と違うかな。開くことさえ出来れば、社長職をうけて六年になるけれど、これまでしばかれたことがこなせるようになるんじゃないかなと思てる。

社長業でいちばん大切なのはこのご時世、資金繰りでしょう。なんぼかっこいいこというても、給料はろてナンボということです。それで初めて従業員の忠誠心も生まれてくるから。従業員にカネのことで苦労させたらアカンとおもてるけれど、中小企業のどんだけの人がそんな心配せずやってるやろうかな。みんな寅さんのタコ社長みたいに毎日、資金繰りで駆け回っとるんやないかな。

――営業中心ということですね。

川藤:野球の知名度があるから、普通の営業マンの方より最短距離で社長と名刺交換させてもらえる。その活かし方というのを考えないといかんわな。最初は紹介されて「考えとくわな」といわれるから、仕事がすっと来ると思いますわな。そんなん、ア・マ・イ(笑)種まきまでは誰でも出来る。そこから水まいたり草引いたり花咲かせて仕事に届くまでは、もっともっと小さな積み重ねが必要や。

世間の営業マンはそれをやっとるんですから、ワシらもっとやらんとアカン。関西の財界の方々と名刺を交換させていただく機会は多い。しかしそれがすぐ仕事に結びつくかというたら、違うからね。名刺交換までは出るけれど、それだけじゃ話ならんからね。そこから攻め続けていかんとアカン。

――プロ野球選手の方は、引退して実社会に入ると「頭を下げ方がわからない」と苦労される聞きます。

川藤:別にそれは苦労と思わない。頭下げるのは当たり前じゃろう。(ふんぞり返って)こないしとって誰が仕事くれる? 長嶋さんでも王さんでも無理やろ(笑)。当たり前のことを当たり前以上にやらないといけないから。

――今の仕事と野球の世界と共通することはありますか。

川藤:生き抜くことが大事や、ということや。名球会の名前も顔のある人でも何%生き残ってます? 現役は現役の間。辞めたら実社会の勝負がありますから。自分がいる世界で生き抜くのは一緒なんですよ。この本出すときも会社が潰れとってもしらんで、それでもエエんか、いうたぐらいや。それぐらい世間なんて、ありきたりで生きていける世界とは違いますわ。とくに土建の世界なんて小泉改革からこっちは完璧なアゲインストの風吹いとるからね。プロ野球の世界でも実社会でも、生き抜くことの難しさは一緒なんよ。

【川藤幸三さんプロフィール】
1949年、福井県生まれ、62歳。福井・若狭高からドラフト9位で阪神入り。現役生活19年のほとんどを代打家業で送り、1985年の阪神日本一にも貢献した。生涯安打数211、本塁打数16。現在はプロ野球評論家と建設会社社長という二足のわらじを履く。最新刊に『代打人生論~ピンチで必要とされる生き方~』(扶桑社新書)



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